【後半報】ポールダンスの向こう側(シドニー編)

出来事は突然に起こる。

ユースホステルで見知らぬ女性二人連れに声を掛けられ、なぜか、これからストリップをご一緒することになった。

前代未聞の展開だろう。

数時間前まで、ユースで親子丼をエサに外国人を捕獲し、一人でいる寂しさを紛らわせる妄想ゲームが出来上がり、今まさに金髪かわい子ちゃんが具現化できそうだった所をその二人に邪魔されたのだった。

ねえ、どう。

ハッ、何です。

どう思う、私たちの格好。これでストリップ行けるかしら。

ほー、この私にファッションチェックをお願いなさるとは、なんと豪胆な、、

ま、確かに、出かける場所、参加するイベントによってはさまざまなドレスコードが存在する海外だが、

ストリップ見に行くときのドレスコードって、誰も知らんやろ。

いいんじゃないですか、それで。

まるで気のない私の返事も、明美姉さんの耳には届いていない。

仕立ての良さそうなベージュのワンピースの腰のあたりのベルトタイプの幅広リボンを結び直している。ま、大人っぽい感じだ。

ヨシエさんの方は、ジーンズに赤いラインが目立つスニーカー。白いTシャツの胸のところには、エスプリのロゴにラメが入っていた。黒のジャケットは手に持ってカジュアルにまとめている。

姉さんに、移動はタクシーにしましょうよと提案され、流石女社長、金持ってんなと思ったことを思い出した。

シドニーの夜をタクシーで移動。こちらも初体験だ。

姉さんは、あまり英語が得意でないらしい。

それでも、せっかく海外に来たんだしと、行先を告げようとした私を手で遮り、言わせてと身を乗り出して来た。

Ah~n、えー、キングス・クロス↑、って最後を少し跳ね上げながら発音していた。

凄い、いきなり疑問形?なイントネーション。

でも、効果は抜群で、ドライバーにはしっかりと通じたようで、OKと親指を立てて返事を返してくれた。

姉さんはしたり顔で、Yes,please.

下から眺めるシドニーの高層ビル群を窓越しに見ながら、俺は何をしにここに来たのかをちょっと考えてしまった。

まあ、良い、今夜は今夜だ。

まして、ストリップの無料鑑賞付きだ、楽しもう。

大都会シドニーの夜、キングスクロスのストリップBarへは問題なく到着した。

玄関先にはデカいボディーガードが立っている。

チラリ、少し目で挨拶して、こんばんわ。

慣れている感を醸し出したかったが、男1、女2、の東洋人。

どこから見ても、観光ガイドブックの読者モデルみたいだ。

ここは、入り口前で入場料を払うシステムなので、一人5ドルです、と姉さんに告げた。

姉さんが15ドル払おうとしたとき、3人で45ドルだと言われた。

ん、なぜ?

前回来た時は、一人5ドルだったが、、

聞いてみると、入場料は、25ドルという設定らしいのだ。

それが、なんらかの理由から、男は5ドルで良いことになっていて、女は25ドル。

でも、君たちは観光者だから、20ドルで良いよと言われて、合計45ドル。

姉さんは、少々納得できていないような感じであったが、45ドルをまとめて払い、Thank you。

デカいガードが、玄関ドアを開いて、Enjoy! と声を掛けてくれた。

さて、いざ、いざ、いざ、

ハッピーアワーの時間は過ぎていたが、とりあえずビールを頼んで乾杯、席に座った。

私を挟んで、右に姉さん、左によっちゃん(姉さんがそう呼んでいた)。

ステージでは、既にダンサーがポールダンスでクルクル回っていた。

よっちゃんは、周りの男たちの視線が気になって、かなり恥ずかしそうにしている。

姉さんは、まばたきもせず、右、左、右、左と凝視している。

時間的には、まだまだ宵の口だが客の入りは多く、盛り上がっている。

みんな、ショーを見ているというよりは、それぞれに会話を楽しんで酒を飲んでいるという感じだ。

雰囲気は悪くない。

それでも、窓が無いからタバコとアルコールの臭いが強烈で、まさに男の盛り場ってところだ。

しばらくしていると、へそ出しルック、下は紐(ひも)だけダンサーがツインで出て来て、ステージのミラーボールにライトが集まる。

ドンッ、ドンッ、バッ、、ドンッ、ドンッ、バッ、一際大きなロックドラムが場を盛り上げる、、

そして、お待ちかね、メインダンサーの登場だ!

会場の熱気は、さらにヒートアップ、MAXゾーン!を超えている。

姉さんは、目を見開いて中央のダンサーに熱視線を送っている。

よっちゃんは、周りの男達を見ている様子。

へー、外人男に興味がねー。

ま、私ぐらいの技師になると、左目で左のダンサー、右目で右のダンサーを同時に観察する事など朝飯前だ。

加えて、姉さん、よっちゃんの様子を窺っておくのもエスコートしている者として当然の礼儀だろう。

ピー、ピー、ピー、股間の張りが抑えきれないぜッ、とばかりに指笛に思いを乗せる男達。

メインダンサーが左足をグッと右足の前に差し出して、クルリ振り向きざまに、爆裂ヒップを突き立てて、ビッグなバストで後ろ向きモーレツポーズだ。

昭和諸氏よ、モーレツと聞いてこの写真を思い出したはず、プレゼントしておこう。

くだらない余談を挟み込んでしまった、失礼。 

この後、中央のダンサーが私の鋭い観察眼に気が付いて、私達のところに寄って来て、私の両膝の上に跨ったのは、前回お伝えした通りだ。

ねえ、今どんな気分?

えッ、

耳を疑う質問だ。

男同士なら、絶対にありえないタイミング。

トップダンサーを膝の上で抱きかかえて、どんな気分だと~、

気持ティいい~、に決まってんだろ、べへぇ~。

1時間ほども、ダンスを鑑賞してビールを楽しんだだろうか。

これ以上は、よっちゃんが持ちそうもないので、一旦出ようということになって、Barを後にした。

念のため、再入場OKのスタンプをデカいガードに押してもらい、バ~イ!

キングスクロスの通りを3人横並びで火照りを冷ましていると、姉さんが感想を話し始めた。

やっぱ凄いね外国は。

どうだった、よっちゃん、楽しかった?

んー、なんかスゴかったね。でも、ありがとう。

そうだ、この2人連れ、よっちゃん失恋旅行の真っ最中だったのだ。

シドニー到着後、最初の行程で、他人の飯をせびり、そして、その次がストリップ鑑賞。

まあ、姉さんのコーディネートなんだろうけど、どういう経緯(いきさつ)でこんな旅の計画をしたのか。

心痛めた友達を慰めるには強烈な荒療治だが、2人の中には、彼らだけにしか分からない何かがあるのだろう。

そして、姉さんは、俺にもしっかり礼を伝えてくれた。

ありがとう。

流石に2人だけでは行けなかったし、楽しかったわ。

でも、ひとつ聞いてもいい?

ん、何です。

今度は、お願いじゃないのね。

まだ、頂いてはいないが金までくれる雇い主様だ。

何なりと、

で、ご質問は?

いやね、男性って、ああいう時、勃起するの?

え、ハイーーィッ。

何聞くんッ、

よっちゃん、この人、おかしいよ絶対、頭に人差し指を持って行った。

よっちゃんは、楽しそうに笑顔を作ってニッコリと笑ってくれた。

 ~終劇~ 

教訓:女社長は、剛腕、速球ストレート派で間違いない。

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