観光者が増えても、子供たちは、知らぬ間に、現金と交換されて行く

最近、新聞紙面などで少し目にすることの増えてきた、最後のフロンティアと呼ばれるのがミャンマーです。

しかし、海外を飛び回るビジネスマンを除き、一般の日本人は、ミャンマーに関してほとんど何も知らないと思います。

以前から一部の旅慣れた観光者はミャンマーの景勝地を巡っておられましたが、一般の方々にとってはマイナーな国です。

それでも、2019年より、観光での滞在が15日間に限りビザなしで可能となったために、今後は脚光を浴びそうなミャンマーです。

人手のまだまだ入っていない観光スポットがたくさんありますか、人気を集めそうな雰囲気は有ります。

しかし、ここでは、ミャンマーの厳しい現実を少し覗いて見る事にしましょう。

それでも、僕は、母を信じたい(Blog記事2019/9/6より抜粋)

16才、中卒、男子A君、ヤンゴンから車で10時間の田舎から、母の願いで働きに来ていた。

仕事の担当は、雑務だ。

しばらくは、車の誘導係といったところだろう。

一日中、車庫の前に座り、戻った車の為に、ゲートを開けたり閉めたりする仕事だ。

ボスに少し詳しく聞いてみると、仲介業者に頼まれて預かったと言う。

これはこれで、断れないしがらみがあるらしい。

依頼人は、A君の母。

仲介業者は、相談内容に応じて、期間を設定する。

今回のケースは、6ヶ月。

月、100000チャット=7000円

6ヶ月分、600000チャットで話しを付けられたらしい。

仲介業者は、10〜20%を撥ねて行く。

母の手元には、35000円程が入る事になる。

同時に、A君の半年間が決まったのだ。

給与は、母が前払いでもらって行くので、A君には一銭も渡され無い。

預かる条件が、寝床と食事付きになっているのは、この前払い制の為だ。

16才の彼が、ここから社会人としてスタートして、一体どういう未来を描くのだろうか。

田舎から出てきた16才の彼は、しばらくの間、右も左もわけが分からないまま時間を過ごす事になる。

この時点では、非行に走る方法すら彼は知らないのだ。

それでも、時間は過ぎて行く。

そして、同僚からさまざまな情報が入って来る。

そこは、多感な16才、都会の大きさと、未だかつて聞いた事が無い話しばかりで、興奮状態に陥入るのも、あっという間だ。

しかし、彼には金が無い。

逃げて、見つかって、酷い目にあった奴の話しも聞かされている。

そして、この生活にも少し慣れて2週間程が経った頃、不意に母が来ていると聞かされ、嬉しさが込み上げて来る。

辛い事は無いか、ご主人様は良い人か、友達はできたか等、母の気遣いの言葉に、大丈夫だよ、とちょっと大人になった様な気持ちで返事をした。

母の訪問だからと言って、一緒に食事でもと言うような甘さは無い。

立ち話しの様に、5分か10分、母は用事があるからと、足早に帰って行った。

A君も、後、5カ月半すれば帰れると、気合いを入れ直す。

昼の休憩時間、先輩君が嫌な感じでニタついて、話し掛けて来た。

お前の母ちゃん、朝来てたよな、後どれぐらい持ってッたんだ。

A君は、分からない。

なんの事だよ。

えッ、本気で言ってるのか、

金だよ、最初が6カ月、そして、お前が続きそうなら、もう半年ってどこだろうな。

A君は、声が出ない。

朝、母は何も言ってくれなかった。

衝撃が強過ぎて、感情が込み上げて来ない。

先輩君は、言う。

安心しろ、うちのボスは良い人だ。

どうせ田舎に帰っても、仕事も無ければ、飯を食う邪魔者だ。

俺は、既に一年いるが、最初の3カ月の間に6回、母ちゃんが来てたよ。

もう、いつまで売られたか分からないさ。

この言葉は、衝撃的だった。

Aは、今更ながらに、自分が売られて連れて来られた事に気が付いたのだ。

その日は、べら棒に寂しかった。

母に聞いてみたかった。

本当に、俺を売ったのか、、

一体、これからどうなるんだろう、、

同僚達と一緒に寝泊まりするタコ部屋が、とんでもない所の様に思えて怖くなって来た。

そんな、Aの純な気持ちとは裏腹に、母は弟も預かって欲しいと仲介業者に頼んでいる最中だった。