【13.脈ありだね。】駅裏 雀荘物語

これが、お金を稼ぐという事か、

今夜の雀荘は、超が付くほど忙しかった。

最後の卓が、粘りに粘って、やっと終わってくれたのは、23:20頃だった。

二人が精算をしている間に、後の二人は、よろしくーと、慌てて出て行ったところを見ると、

電車組みなんだろう。

残った二人の方は、卓の勝ち負けと利用料の精算を手際よく済ませてくれて、

おつりを持って行こうとすると、手で俺を制止して、

チップチップ、取っといてと、三千円程の釣銭を置いて行ってくれた。

ありがとうございました。また、お待ちしております。

大きめの声で客を送り出して、

手に入れたばかりのチップを、先輩の佐山君と折半で分けあった。

バイト代の時給が600円だったから、この1,500円は大きかった。

焼きそばパンがいくつも買えるゾと、そこは普通の高二の考えが頭に浮かんだ。

最後の客が帰る一時間程前だったか、

お疲れさまでーすと、喫茶の女子がコーヒーカップを下げに来てくれた。

今日は、忙しかったですねー、喫茶の方もずーと満席でしたよ教えてくれて、もう私が最後ですと下りて行った。

ミッチャン、既に帰ってしまったのかあ。

結局、昨夜の事は話す時間もなく、タバコにも誘われず、、

ちょっと、寂しい気持ちになった。

・・・、ま、バイトに来て、仕事が終われば家に帰る。これで普通なんだけど、、

凄い孤独感というか、独りぼっちみたいな気持ちになった夜だった。

翌日、いつも通り15:45頃に到着して、

着替えて、そーっとロッカーの裏側の気配を探ってみた。

誰かいるか、、

抜き足、差し足、忍び足、シーン、

ゆるりと、歩いて、立ち止まり、シーーン、

さらに、もう一歩を、ゆっくりと、シーーーン。

何だよ、なんにも無しか。

若さというものは恐ろしいものである。

昨日、あれだけ疲れたていたのが、今日は嘘のように元気で、

心では、ミッチャン、ミッチャンと叫びながら、

男女ダブルのロッカールームでは、生(なま)の高校二年生に戻っているのだ。

我ながら、その回復力には驚くばかりだった。

外の置き型灰皿の前でタバコを一服ふかして、

階段を一気に、三段抜かしで、トーッ。

一階へと飛翔したのだった。

ガチャン、15:55分にカードを押して、

ちょっと失礼、ミッチャンの、カードを確認すると、

がーん、スタンプが無い。

オー、ノー、ようこ。イエスタディ~、♪

非番日だった。

ガクッと肩を落としかけた、その肩を、

ポンと叩かれ、振り返るとリョウ子さんだった。

ミチコ、今日非番だよ。

このところ水曜休みのシフトだからね。

あ、いえ、俺は別に、、

良いって、良いって、気にしなくても。

気になるんでしょ、ミチコの事が。

昨日は、話せたの? 忙しかったらしいじゃないの、聞いたわよー。

あー、そうだ、一昨日(おととい)は、お疲れさん。ありがとね。

あ、いえ、大丈夫です。

でも、凄かったね、ミチコの話。

あの後も、随分話したんだよ二人で。

ノッポも知りたいでしょ、つづき、、

後、30分ぐらいで休憩だから、そしたら上に行くね。

分かりました。まだ混んで無かったので大丈夫だと思います。

今日も、佐山君とでしょ。

はい、18時までは二人です。節子さんは非番なんで。

じゃ、後30分ぐらいで行くよ。

じゃ、上で待ってます。

ミッチャンの話が聞ける。

そう思うと、少し元気が出た。

2階に戻って、佐山君に断りを入れて、一応事情を話して置いた。

丁度30分で、カラン、コローンとリョウ子さんが入って来た。

佐山君、ゴメンね。ちょっと、ノッポ借りるね。

どうぞ、ごゆっくり。

佐山君が、右手を前にやって、どうぞ奥へと合図して、

それを見たリョウ子さんは、もう一度、ゴメンってやって、

俺の背中を押して行った。

ん、ちょっと、違和感があるぞこの二人。ふざけ合ってる感じがしたぞ今、怪しいなあ、、。

奥の部屋の手前の掘りごたつに座ると、壁の陰になって手前の部屋からは見えない場所だった。

リョウ子さんは、時間があまりないからと、さっそく話を始めてくれて、

ミチコが住んでるあのアパートが、実はこの会社の持ち物で、

社員寮も兼ねていると教えてくれた。

私も、ぜんぜん知らなかったよ。

私も、ここ割と長いけど、ホントにいろいろやってんだねこの会社、大きいよここ。

それでね。

あのアパートで暮らす事になった理由がね、

引っ越しだったらしいの。

え、引っ越しですか、、どういう、、

そうなの、私も最初分かんなかったのよー。

覚えてる、ミチコが言ってたでしょ、しばらく鬼瓦のところに居たってね。

あ、はい。お母さんが、最初に入院した時でしたよね。

そうそう、それでお母さん退院して、しばらくして、

お父さん達と会って、

はい、そこまでは、覚えています。

その頃に、お母さんが新しい男にくっついて引っ越すって、言い出したんだって。

ミチコにも一緒に来いって言われて、

それで、ケンカして友達のところに転がり込んだんだって。

それを見かねた鬼瓦さんが預かるってことになったって分けね。

でも、この辺は、ミチコも分からないって言った。

ひょっとしたら会長さんの、お父さんの命令かも知れないって。

いくら鬼瓦が良い人だからって、全くの赤の他人だからねー、ミチコは。

それで、仕方なく、しばらく世話になったらしいのよ。

でも、結局は、他人は他人、ミチコ的には窮屈だよね。

で、いろいろあって、

このアパートってわけ。

ただし、条件があってね。

ここの喫茶でバイトするって言うのが最初の条件。

そして、高校に入るまでは鬼瓦のところで暮らすって言うのが二つ目の条件だったらしいの。

だから、ミチコ、一生懸命サボらずに働いてたんだよー。

そうなんだ。エライじゃないですか、ミッチャン。

それから、もう一つ話が、あるんだけどねー、どうしよっかな。

聞きたい?

何ですかー、もったいぶって、、

ま、いいか、キヨシの事だよ。

ドキッ、

名前を聞いた瞬時に緊張が走った。

昨日、ちょっと心配になって、

一昨日(おととい)の事もあったから、電話したんだよね。

そしたら、キヨシが来てるって言うのよ。

え、キヨシさんが、、

もう、心臓が口から出そうに高鳴って、バクバクバク、、

どうして、なんでー、何があったんですかー、って全部聞きたかった。

泊まっていったのか、泊まったのかよー、くそ-ッ。

お金だって。

え、お金? ですか?

借りに来たんだって、アイツ。

また、昨日、パチンコで負けたらしくって。

みんなが、忙しい時にさー、ま、一応少しは残業したんだから、

その後どこに行こうが構わないけどね。

35歳のオッサンが、夜の23時頃に、16才の女の子のところに来て、

ビール飲んで、お金借りる普通ッ、クソだねあの男は。

明日は、ぜったい5万は勝てるから、金貸してくれだとさ。

バッカじゃないの。

じゃー、どうして、昨日は負けたんだよー、絶対なんか無いつーの。

ホント、ごみ野郎だよ。

リョウ子さんは、可能な限り汚く罵りたいようだった。

じんわりと、汗が出るのが分かった。

キヨシさんの名前を聞いた時は、緊張して驚いたけど、

今は、しまったという気持ちになっていた。

俺のせいだ、俺の。

俺が教えた、国道沿いの新装開店情報だ。

新装開店の時間には間に合わなかっただろうけど、間違いなく下見に行ったんだ。

今日のために。

それで、新装台に座れなくて、負けたんだ。

軍資金を使ってしまって、ミッチャンとこに行ったんだ。

強烈な、罪悪感が沸き起こった。

一体、俺は何をしているんだ。くそー。

気持ちを切り替える為に話題を変えた。

リョウ子さん、そう言えば、

おとといの、忙しかった日、、

ミッチャン、俺に何も言わずに帰っちゃたんですよ。

タバコも誘いに来なかったし、、忙しいからだと思ってましたが、、

既に、バイト中に何かあったのかもしれませんね。

あり得るね。

ま、いずれにしても、ミチコには、電話でも言ってやったの。

もう別れなってね。

なんの義理も無いんだから、

泊めちゃだめだよ、今夜はってね。

え、泊まって行かなかったんですか、、

そう、ビール飲んだら帰るって言ってるって。

ミチコも分かってたんだよ、お金は無いって断ってね。

まあ、偶然私が電話したのもタイミングよかったんだと思うけど。

そうなんですか、、

何ー、ノッポ、その顔、

良かったーって、書いてあるよ。分かりやすいねー。

ハハハ、そうですか、なんか書いてありますか?

こんな、切り返しが精一杯だった。

確かに、爆発しそうだった心臓は、急に落ち着きを取り戻している。

ミチコ、もうキヨシとは分かれるつもりだよ。間違いないよ。

はーい、そこで、ノッポ君。

何ですか、急に。

君に、グッドニュースがありまーす。

聞きたい?

ええ、まあ。

覚えてる?

おとといの夜、三人で乾杯した後に、

ノッポがタバコ吸いにベランダへ行った時のこと。

私が、このビール、キヨシのかって、ミチコに聞いたの、

知らん顔して帰っちゃったけど。

ちゃんと聞こえてたんでしょ?

・・・

まあ、それがポイントじゃないんだけどね。

その時、ミチコがさ、

指でこう、シーって唇の前で、やってさ、

首振って、言わないでって、、

私、思わずゴメンって、言ったんだけど、

あれ、ノッポに聞かせたくなかったんだろーね。

だから、ノッポが帰った後に聞いてみたんだよねー。

どうなの、ミチコ、ノッポみたいなタイプってね。

お姉さま、凄ーい。

あなたは天才か、それとも、女神様なのか。

聞きたい?

あー、じらさないでー、もうケッコウ仮面なんて呼びませんから。

ミチコが言うにはね、

ノッポは優しくて珍しいって。

ミチコ、かわいいけど、見た目が派手でしょう。

化粧もしてるしね。

だから、今まで、不良仲間か、スケべ親父しか近寄ってこなかったらしいの。

ミチコに興味があっても、ミチコの話には誰も興味が無かったんだって。

話より、下心ってことでしょう。

だから、ノッポは、変わってるって、

普通にミチコの話を聞いてくれるからって、、

話しやすいって言ってたよ。

脈ありだね。

そうなんだ、、

お姉さん、僕、天国に行ってしまいそうです。

心の中で、反芻してみた、脈ありだね、脈ありだね、、

もう少し、具体的に、何か言ってなかったのかな、お姉さま、

リョウ子さんの、次の言葉を待ったが、

頑張りなよー、ノッポ、応援するよー。

え、それだけですか?

他には、ノッポ君の事が気になってるの、リョウ子さん手伝ってとか、

そう言う類の、、ものは、、

良いなー、私も戻りたいなー、高校生っか、、

ダメだ、この人は既に別の世界の人になっている。

つづく、、

【おまけ】

休み明けのミッチャンに、おやようって声を掛けられたノッポ君。リョウ子さんの言葉にまだ緊張していたのか、おうッ、とぶっきらぼうに返事してしまった。気持ちと行動がぎくしゃくしているぞ。勇気を出して、次のステージへ進む行動に出られるのだろうか、、

★★★★★★★

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