【14.ミチコには意外な才能があった。】駅裏 雀荘物語

ここは、3階の男女更衣室前、いつもの喫煙場所だ。

自分の休憩時間を割いて、ミッチャンの話を詳しく聞かせてくれたお礼に、

自販機の缶コーラを1本買ってタバコに誘った。

リョウ子さん、一つ聞いてもいいですか?

何? いいけど。

リョウ子さんて、佐山君と付き合ってるんですか?

ブッ、なにー、いきなり、、

コーラをちょっとふき出して、缶が口の前で止まっている。

人が完全に狼狽したときの動きだ。

いやー、なんとなく、さっきそう思ったから。

へー、ノッポ、鋭いね。

そう、ちょっと前からね。

佐山君って大学生ですよね、、

なにー、ノッポ、何が言いたいのかなー、

私が、オバサンって、、んー。

いやー、違いますよ。

リョウ子さんは、凄く綺麗だし、ステキですよ。

今でも、俺、話す時、緊張してるんですから。

ホント-、ま、ウソでも嬉しけどね。

ほんとですよー。

佐山君も、きっと嬉しいと思います。

なになにー、恋のカウンセリングですか、ノッポ君。

え、いや、すみません。

いいよ、佐山君とは、これからどうするかなーって、

このリョウ子姉さんも、悩んでるんだから、

やっぱり、相手は大学生だしねー、

私、もう30、だし。

男と女には、年齢なんて関係ないって、、

あはは、それ、節子さんね。

それが、できれば理想だけどねー。

大丈夫だよ、私達は。それより、自分の方、頑張りなさーい。

ミッチャン、ミッチャン、ミッチャーン、でしょ。

ハハハ、ですね。

タバコを深めに吸って、灰皿に揉み消した。

よし、仕事に戻ろうか。

リョウ子さんは、そう言って、しゃがんでいた俺の肩をポンと叩いて階段を下りて行った。

確かに、俺はミッチャンの事ばかり考えるようになっている。

でもなー、頑張れって、何を頑張んだよー。

このまま進めば、いずれ気持ちが頂上へ上り詰めるだろう。

そして、告白の壁にブチ当たる。

いつものパターンだと、我慢できずに、好きだーッて、自爆型の告白で撃沈だよな。

無理、無理、無理、無理、、、

今回は、そんなんのとはちょっと違うし。絶対にそんな事出来ない相談だった。

あーあ、フィーリングカップル5対5のボタンでもあればなーッ。

2階の雀荘に戻ると、佐山君が、奥を指さして、

あっち頼むよ、オーダー入ってる。

あ、すみません。すぐ行きます。

タバコを吸っている間に、卓が結構埋まっていて、

奥の4卓に新しい客が来ていた。

順番にオーダーを取っていると、

その中に、昨日も来ていたあのグループがいて、話しかけてきた。

兄ちゃん、昨日楽勝だったぜ、新装開店。

もう、釘が八(は)の字で、ゴッソゴソでさー、

もう、V(ブイ)にしか入らないって感じで、

座って閉店まで、ジャンジャンバリバリーって、なあ。

同席のお客さんも、うんと頷いて、財布をパンパンと叩いていたから、随分と勝ったんだろうな。

なあ、兄ちゃん、

下のサテンのマスター、リーゼントの方、

昨日行ってたろ、ラッキーパーラー。

新装の島が埋まった後に来て、しばらくウロウロ眺めてたけど、

他の台打って、ありゃ負けてたんじゃねーか。

台バンバン叩いてたからな。

まさに、その通りだと思った。

それで、金が無くなってミッチャンのアパートへ行ったんだ。

まったく、余計なことをしてしまった。

結果的に、俺が流した情報で二人共に悪い事になってしまった。

キヨシさんにすら申し訳ない気持ちになって反省した。

この日のバイトは、夕方の客の入りから、また忙しくなるのと予想していたが、

降り出した雨のせいか、客足は鈍かった。

麻雀に天気は関係ないと誰かが言っていたが、今日だけは天気に左右されているようだった。

雀荘での仕事は、基本、客のお世話係だから、客が少ないとやる事もまた少なかった。

そんな時は、牌を磨いたり、次の準備をしたりするのだったが、それでも時間が余れば好きな事をしていて構わなかった。

一人の先輩など、その時間はずっと本を読んでいて、これが出来るからこのバイトにしていると言うほどだった。

俺と佐山君は、よく牌を使ったパズルゲームで100円程を掛けて時間をつぶしていた。

ビービー、ビービーと内線が鳴ったのは、俺が200円程勝った時で、

佐山君が受話器を取って、俺の方を見て、はい、と返事していた。

島崎課長が上でおまえを呼んでるってさ、行って来いよ。

あ、はい、分かりました。じゃ、ちょっと、行ってきます。

ここは、7階建てのビルで、もちろんエレベーターがある。

しかし、1階と2階の従業員は、3階のロッカールームまでは階段を使う規則になっていた。

面接の時以来だな、このエレベーター。

4階のボタンを押して、、

失礼しまーす。

課長、お呼びでしょうか。

おう、野上。

まあ、こっち座れ。

あの、革張りのソファーを勧めてくれた。

梅ちゃん、お茶を二つ頼むよ。

え、良いですよ、お茶なんて。

大丈夫だよ、遠慮すんなよ。

何か怪しいな。

バイトを仕事中に呼び出して、お茶が出る。

いくら、大人の世界に疎い俺でも、これが普通じゃないことぐらい分かった。

どうだ、野上、仕事慣れたか。

はい、おかげさまで、何とか。

皆さんに、良くしてもらってますから。

そうか、そりゃ何よりだ。

梅子さんがお茶を運んでくれている間、じっと腕を組んで黙っていた島崎課長が

一口飲んだ湯呑茶碗をテーブルに置くと同時に、

ミチコの事なんだがなあと、話し出した。

えッ、と心の中で声を出したが、口に出すのは控えて、落ち着いた様子で返事してみた。

ミッチャンの事ですか、どうかしたんですか。

緊張せんでもええ。

節子さんから、ちょっと聞いてな。

おまえ、ミチコの事で、会長の事詳しく聞いたらしいな。

あ、はい。

まずかったんでしょうか。

いやいや、違う。

どちらかと言うとな、礼を言いたいぐらいなんだ。

山城会長が、ミチコの父親って言うのは、別に隠し事じゃないからな。

それに、俺もどうしたものか、ずっと考えてたんだよ。

俺の家に居た時だって、あまり楽しそうじゃなかったからな。

ただな、ミチコは不良なんかじゃないんだ。

どうしていいか分からないだけなんだよ。あいつ。

全く、ひどい話だからな、ミチコにしてみたら。

それでだ、

おまえに、一つ、頼みたいことがあるんだよ。

佐山に聞いたけど、お前、ミチコと仲良くやってくれているらしいじゃないか。

はい、まあ。

珍しんだよ、それが。

ミチコがここに来て、もう一年ぐらいになるかな。

雀荘の方も、喫茶の方も、若いバイトをここは雇っているから、何人も来るんだよ。

どちらかというと、やんちゃそうなのが多いがな。

しかし、大概は、仕事が地味で客の世話ばっかりだから、みんなスグに辞めっちまう。

それは、面接の時にも言ってたよなあ。

はい、聞きました。

ミチコは、ここじゃ真面目に働いている。

当然、ミチコとは、上手くいかなかった。

見た目が派手だから、そいつらにも誘われたりしてたみたいだけど、

完全に無視って感じでな、そいつらでは、ダメだったんだ。

そう言う意味じゃ、ミチコは人を見る目があるって事だな。

なんか、ケツの方がモソモソするような、間接的な褒められ方に、

きっと、変なことをお願いされるという嫌な予感がした。

それで、課長、俺に頼みたい事って言うのは、、

あ、そうだ、そっちが本題よ。

ミチコにな、試験を受けるように勧めてもらいたいんだよ。

おまえから。

えッ、試験ですか?

そうなんだよ、長い間不良やってて、勉強してねえから成績はダメなんだが、

アイツは、頭悪くねえんだよ。ホントはな。

それと、絵が描けるんだよ。

絵、ですか? 手を動かして何かを書く振りをして確認した。

そうだ、マンガじゃねーぞ、絵画だ。抜群に上手いぞ、あいつは。

へー、そうなんだ。

ミッチャン絵が上手いのかあ。

で、試験というのは、どういう事なんですか?

いやな、今、行っている学校。

あそこは、良くないだろ。不良も多いし。

確かに、評判は最悪だった。ケンカの話しか聞かないような学校だった。

あんまり学校にも行っていないとミッチャンは言っていた。

そうですね。ミッチャンもあまり好きじゃないと言っていたと思います。

そうか、お前には、そんなことまで話したかミチコの奴、、

やっぱり、お前が良い。

頼む、ミチコに、絵の学校の試験を受けるように勧めてくれないか。

島崎課長の話だと、山城会長の知り合いの紹介で、絵の専門学校への転校を考えているとの事だった。

なるほど、この会社の会長さんなら、何でもできそうだと思った。

結局、島崎課長さんに、何度も頭を下げられて、

分かりました。話はしてみますと、引き受けてしまった。

正直、そんな才能があるなら、今の学校よりよっぽど良いんじゃないかと思った。

よーし、明日は、どんな風に話そうかなあ。

どんな絵を描くのとか、いつから描いてるのとか、いろいろ聞いてみようかと作戦を巡らせるのは結構楽しい時間だった。

つづく、

【おまけ】

突然、島崎課長に呼び出されたノッポ。だが、その理由は、ミチコへ試験を勧めるという意外な内容だった。

ミチコの秘められた絵の才能。良く分からないままに試験を受けるように勧めるノッポ。そして、それを受け入れるミチコ。しかし、受験する学校は特別な専門学校だった。学校、そんなに遠いんだ、、、

★★★★★★★★★★

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