【12.キヨシをやっつけろ!】駅裏 雀荘物語

チリン♪、チリン♪、チリン♪、

自転車を漕ぐ足取りが、とても重かった。

昨日、ミッチャンの話でブン回された気持ちが、長~い、尾引いている。

学校に向かう途中の自転車は、前輪が右へ左へふらついて、

ゆっくりと、ゆっくりとしか進まなかった。

お父さんの話だけでも、ズシーンと重かったのに、

最後に聞いた、”キヨシのビール”

この言葉が、まだ頭から抜けないままだった。

クラスのみんなは、俺の話を待っている。

スーパーヒーローは、軽やかに、颯爽と現れなければならないというのに、、

おはよう、、

ドサッ、

席に腰を下ろして、机に突っ伏した。

元気ないんですー、ちょっと放っておいてと言う強い意思表示のオーラを出してみた。

、どうした。

なんかあったか。

振られたんじゃね、あれは。

眠いダケなんじゃない?

いや、タイミングを待っている隠し技かもしれんぞ、迂闊に近寄るな。

もう、言いたい放題だった。

君達には、このオーラが見えないのか。

まだ色のつ付いていない透明の恋、ちょっと間違えば壊れそうな不安を、何とか希望の勇気で包み込み、

次の一歩を、どう踏み出そうかと自問自答している、この姿の意味が、

全く、読み取れていない、おバカ軍団。

えーい、シュワッチ、グゥーーン↑。

おぉーッ、起き上がったぞ。

いいぞーッ、やっぱりスーパーヒーローだ、やいのやいの。

ところで、野上氏、、つかぬことをお尋ねしますが、

バイト代は、その-いつ頃入りますかねー、

なんと、金の心配か、それも俺の財布の、、

ちょっと、止めなさいよー、達也、疲れてんじゃない。

ちゃんと、聞いてあげようよ。

で、マダムとオットセイの不倫、どこまで進んだの?

もう、やっちゃったのかなあ?、、

あのねー、君、女子だろ、一応。

うーん、気になる気になる~ッ、

早く教えて-、たっちゃ~ん。

触るな、触れるな、俺の太ももを摩るなー、エロ星人。

えーい、まとめてうっとおしい、奇獣たちよ。

今、言ってやるから、耳を貸せ。

まずは、キヨシのビールの話だ、、

すげー、キヨシ、キヨシ、キヨシ、ワー、ワー、、

で、キヨシって何です?

あ、いや、何でもない。

マダム、

そう、Fカップ、そして、オットセイ部長。

そうだよー、それだー、どうなった、そこ、

やっぱり、ボンボンって来て、ぎゅーッか? へえ、どうなの、

野上氏ーッ、

いやね、俺も、まだ、よく知らないんだよー。

喫茶の方で、次の日の朝から騒いでて、日曜日は休んでて、

そいで、昨日は、ちょっといろいろあったから、

ゾロゾロゾロー、皆、散っていった。

ダメダメ、ガセガセ、空鉄砲だってよ。

オオカミ少年の方が、まだマシなんじゃねーか。

行こーぜー、収穫ゼロだってよ。

ボロッカスに言われた。

ま、しかし、この年代の男子女子に、微かにでも性をイメージできる話題を振りかけて、

収穫ゼロじゃ、無理もない。

ある意味、これ系の話題を振るのには、それなりの覚悟がいるという事を思い知った。

達也、バイト先でノッポって呼ばれているの?

割と仲の良い、順子が聞いてきた。

大丈夫? 何かあったの?

と、俺の横で立ったままで聞いてくれた。

大丈夫、何でもないよ。毎日、バイト遅かったから疲れたダケだよ。

正直、土日はロングだったし、昨日も遅かったから体がキツかった。

学校にいる間、ずっとミッチャンの事を考えていた。

友達の乾杯をしたって、それは、女同士の話で、

俺は、これから、ミッチャンとどう接すればいいのか分からなかった。

そうだ、まずは、キヨシ問題を処理しよう。

この気持ちを落ち着かせるには、キヨシと別れさせて、奪い取る、、

うーむ。

オッサン相手にどうしよう。

空手でも習いに行くか、

力こぶを作って、セイッ、突き出してみた。

止めておこう、向いていない。

それに、時間が掛かりすぎる。

よし、作戦変更だ。

我ながら、決断の速さに痺(シビ)れるぜ。

まずは、様子を見るんだ。

いろいろ聞き取ってみよう、そうだ、そうしよう。

作戦の方向性が見えて、ちょっと元気が出て来た。

よーし、キヨシ、待ってろよー!

俺が、この手でミッチャンを救い出してやるぜッ、シャーッ。

雀荘ビルの前に到着したのは、15:45分。

いつも通りだった。

着替えを終えて、タバコを吸って、

2階のドアを、カラン、コローンと開けると、

朝番の節子さんが帰り支度をしていた。

よし、間に合った!

今日は、16時までですか?

そうだよ、これ以上働いたら死んじゃうよー。

いつもの、今日も元気だよ、という挨拶代わりだった。

節子さん、ちょっと聞きたいことがあるんですが、良いですか?

何だい、ノッポ。手短に頼むよ。

スッと、客様に用意していたショートホープを二つ掴んで、

節子さんの手提げ袋に忍ばせた。

もちろん、金はレジへちゃんと払ってだった。

ほーぅ、本気だね。

いいだろう、あっち、座んなよ。

節子さんは、奥の掘りごたつを指して先に歩いた。

あ、ちょっと待っててください。タイムカード押して来ますから。

3段飛ばしで下りて、ガチャン、

ついでに、ミッチャンのタイムカード確認すると

さっき来たばかりと分かった。よしッ。

でも、まず上からだ。

今度も三段飛ばしで上がって行って、

節子さん、お待たせしました。すみません。

早速なんですが、

節子さん、ここじゃ一番の先輩ですよねー。

掘りごたつに足を挿し入れながら質問した。

先輩か、上手い事言うね、ノッポ。

ただの皺くちゃ婆さんだよ。確かに、40年以上働いているけどね。

じゃ、この会社の事なら何でも知ってますよね。

例えば、会長の山城大蔵さんの話とか、、、

えー、あんた、何を聞くかと思えば、大将の事を、ねえ。

節子さんは、会長の事を大将と呼んだ。

で、何が聞きたいんだい。

うん、それがですねー、かくかくしかじかで、、

大体のストーリーを聞かせて、返事を待った。

そうかい、あの娘、ミチコがねえ。大将の子だったのかい。

世の中、分からないねー、、

それから、節子さんは、山城大蔵という人の事を、いろいろと話してくれた。

戦後の動乱期、いろんな商売で儲けたらしく、

この界隈じゃ有数の地主、土地持ちという事だった。

戦前は、農家をしていて、戦中も食うに困らず、

反対に、随分といろんなものと引き換えに食料を闇で流して、

大儲けしたのが大将の親父さん、先代だよ。

後を継いだ大将が、いろんな商売やって大きくしたんだけど、

ここら辺の土地やビルをいっぱい持っているからね。

ここだって、駅裏と言っても、駅まで歩いて1分の一等地だよ。ここは。

土地持ちは、強いねえ。

でも、大将は長男じゃないんだよ。上に一人、下に一人、それと妹が一人いるんだ。

みんな、山城グループの会社で社長さんやってるよ。

ただ、商売に掛けちゃ、大将が一番で、みんなそれを分かっている。

その、大将の隠し子が、ミチコとはねえ。

ノッポ、あんた、まだ来たばっかりなのに、よくそんなこと知ってるねえ。

もう、ミチコに手、出したのかい。

ち、違いますよ。まだ、出してませんよッ。

ぇ、まだって、惚れたのかい? 

早いねー、今時の若いのは。

昔はさー、もっとこう、男も女も、奥ゆかしさってもんがあってさ、

あー、はいはい分かりましたよ。

あと一つ、どうして、そんな大金持ちの会長さんが、

ミッチャンのお母さんと、まして子供が出来るような、、

バカだねえ、ノッポ。あんたは流石に若いねー。

男と女に、理由なんてないよ。

目と目で、見つめ合って分かり合うのさ、

ただそれだけの事だよ。

金なんて、関係ない、、、

節子さんの言葉には、何か、それが真実だと思わせる確かな雰囲気があった。

ありがとう、節子さん。

少し分かった気もします。

また、教えて欲しい事があったらお願いします。

そうかい、じゃ、私は、帰るとするかねー。

ノッポ、次の時は、セブンスターにしておくれよ。最近はそっちの方をやっているから。

了解でーす。覚えときますよ、節子さん、お疲れ様でした。

男と女、特に理由はいらないか、

その通りかも知れないと思った。

兄ちゃん、コーヒー2つ、ナルハヤで、よろしくなッ。

おッ、あのお客さん、今日は勝ってるな。

雀荘での仕事も少し慣れて来て、雰囲気でどの客が勝っているのか分かってきた。

内線で、コーヒーを注文したが、ミッチャンじゃなかった。

今日の喫茶は、かなり混雑していて、ほぼ満席だった。

こりゃ、休憩も無しで夕方に突入するなと思った。

コーヒーが出来たと合図が来たので下まで取りに行った。

喫茶が忙しくない時は、上まで出前してくれることになっていた。

でも、今日はダメだった。

コーヒーを客に運ぶと、その卓は休憩中で、

行こうぜ、次の半荘終わったら、昨日、バカスカ出たらしいから。

灰皿を取り換えながら、少し聞き耳を立てて、

お客さん、どっか新装開店なんですか?

バカスカって良いですねえ。

ああ、国道沿いのラッキーパーラー知ってっか、あそこの新装入れ替えだよ。

もう座れれば5万確定って連れが言ってたから。

それって、今日までッすか。

月火水って言ってたから、明日までだな。

ありがとうございます。

でも、俺は、ここのバイトで行けないんですけどね。

残念だなー、兄ちゃん。

バイトなんかサボって行って来いよ。

5万だぜ、ハハハ、冗談だよ。

これは、良い事を聞いた。このネタは使える。

客が次の注文をするのを待つ間、作戦を考えた。

パチンコ好きのキヨシさんにこの情報を流して、

パチンコ屋に行かせてしまおう。

俺が言わなくても、どの道、別の店に行くんだろうから、同じことだ。

座って5万は、興奮するに違いない。

兄ちゃん、ここ、サンドセット4つなー。

ハーイ、かしこまりました。

キターッ、ここだ。

内線で注文したセットが上がったと連絡があったので、

まずは、サンドウィッチを取に下りた。

丸盆にサンドを乗せながら、キッチンの中のキヨシさんに合図した。

こっち、こっち、ちょっと。

キヨシさん、知ってますか、国道沿いの新装開店情報。

えッ、知らねーよ。どこよ?

ラッキーパーラーですよ。昨日から、明日まで。

さっきお客さんが、座れば5万って言ってましたから。

なにー、ホントかよ。

くそ-ッ、見て見ろよノッポ、奥、満席だよ。

今日は、18時上がりなのに、残業確定だよー。

あー、チキショーッ、行きてえな。

効き目、抜群だった。

セットのコーヒーを取りにもう一度下りてくると、

クリームソーダが作ってあって、両手を顔の前で合わせて、これからも頼むとの合図だった。

ミッチャンとは、軽く挨拶しただけで、

今日は、上も下もてんてこ舞いに忙しかった。

つづく、、

【おまけ】

キヨシにパチンコ情報を流して様子を見るノッポ。しかし、ミチコの顔が見える度にその姑息さが嫌になった。

やっぱり、止めようこんな作戦。そう思いとどまるノッポとは裏腹に、キヨシは毎日情報を欲しがったのだった。

ノッポ、今日は無いのかよ、スペシャル情報、、、

★★★★★★★

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