(9) タイ、バンコク、トゥクトゥク物語【危険です! テキーラ、クロスショット】
出迎えは、最高の笑顔だった。
遅~い、待ったよ~。
どうして、もっと早く来なかったの、プイ。
怒られてしまった。
当然かもしれない。
昼間、お寺のガイド役であれだけ頑張ってくれたのに、私はKenに連れられてGOGOBARでクネクネと揺れるお尻にうつつを抜かしていたのだ。
初物ばかりのタイ旅行の中でも、かなりインパクトの強い体験であったのは間違いない。
ま、ここは穏便にいこう。
お詫びと言っては何だが、到着早々にお好きなものをどうぞとドリンクを奢って誤魔化しに入った。
あ、ママさんもどうぞ。
俺には、ハイネケンを氷入りでよろしく。
ノンちゃん、ゴメンな。
Kenがさあ、あの店に行こう、ここも寄って行こうと連れまわすもんだから、こんな時間になってしまったよ。
な、そうだよな、Ken。
そうなんだよノン、ボスがあっちも行きたい、こっちも行きたいと言うもんだから、、
はは、相変わらず上手いこと言うやつだ。
へー、そうなのね、いろいろと行って来たんだー。
声のトーンからすると、ノンちゃんも特段こだわっている分けではないようだった。
で、楽しかったの?かわいい子はたくさん見つかったの?
脇腹をつつかれて、、、
どうだったかな、、少し返答に困っていると、、
でも、大丈夫。今は、ここに来てくれたから、すごいハッピーだよ。さ、飲みましょ。
ママー、テキーラ、お願い、2杯ね。
えッ、いきなり2杯飲むの、構わないけど。
違うよー。1杯は私、そしてもう一杯は、あなたよ。
運ばれてきたテキーラのショットグラスを一つ私に渡して、持ち上げてねとノンちゃんが言う。
そして、塩を指でつまんで唇に運んだ。
その唇は、ピンクのリップグロスでキラキラと光っていた。
同じく、私にも少しナメておいてねと指でつまんで唇に付けてくれた。
持ち上げたショットグラスをチンと鳴らして気合を入れて、それから互いに腕組みをする様にクロスさせて絡めて、せーのの合図で一気に飲み干した。
クーッと、熱いテキーラが喉が奥へ落ちて行くのを感じていると今度はカットレモンを噛ませてくれた。
そして、自分もレモンをチュッと唇で絞り、目で酸っぱいよーと語り掛けて、チュッてしてくれた。
たぶん、これで落ちたと思う。
もう、後には引き下がれないほど前のめりに嵌ってしまったんだと思う。
それが証拠に、もっと早く来ればよかったと大きな後悔を感じてしまっている。
この後の残された時間を確認するように腕時計を見ると、既に24時近くになっていた。
大丈夫だ。楽しい時間は今少しある。
結局、ここが一番楽しいと思った。
やはり、知っている間柄と言うのは良いものだ。
たった2日間だったが、こんなにも距離が縮まるのかとも思った。
例え、それが作られた空間と時間だとしても、もうそんなことはどうでも良かった。
今ここにいる自分の現実だけを感じ取りたかった。
到着してから、ほんの20分か30分だっただろうか。
3杯のテキーラを呷(あお)って気分は最高だった。
止まり木に腰かける私につかず離れず甲斐甲斐しく相手をしてくれるノンちゃん。
2時間ほどの時間が、あッという間に過ぎて行った。
ねえ、あしたの昼間はどこかへ遊びに行くの?
あ、そうか、ノンちゃんまだ知らないんだね。
明日は、昼過ぎの便でプーケットへ行くんだよ。
えー、プーケットへ行っちゃうの、、あしたなの、、
もう、バンコクには帰ってこないの?
この問い掛けには、強烈に後ろ髪を引かれた。
ヤバイ、あまり話しているとプーケット行きをキャンセルしかねない勢いだ。
誰と行くの?
え、独りだけど。
元々、プーケットでダイビングをする予定だったんだ。
そっか、いいなー、ダイビングかあ。
お魚がいっぱいで、楽しそうだねー。
ノンも、ちゃんと泳げるんだよと、ちょっと自慢気に言ってみせた。
一緒に行けたら楽しいのにね、きっと。
この辺のやり取りは、正直もう分からなかった。
たった2日間しか経っていないのに、特別な関係になったような気分にさせられた。
プーケット行きを止めそうな勢いが、今度は、ならば一緒に行くかいって気持にさせられるほどだった。
あまりの気持ちの動揺に、我ながら笑みがこぼれてしまった。
そんな雰囲気を察知してかKenが割って入ってくれた。
ノン、ボスを困らすんじゃないよ。
ボスは、またバンコクに返ってくるんだから。
えー、そうなの。いつ? じゃ、また会えるんだね。
でも、プーケットに行ったら、必ずバタフライするよね。
ノンの事は忘れて、あなたは、きっとバタフライする。
バタフライと言う表現は初めて聞いた。
だが、状況から察するに、バタフライ=蝶、あっちへひらり、こっちへひらりって感じの事だろうと想像はついた。
ハハハ、ボス、バタフライって分かりましたか。
何となくな。
浮気するっていう意味ですよ。
やっぱり。
ノン、大丈夫だよ。ボスはきっとノンのことが好きだからバタフライはしないよ。
こらこら、Ken、話を勝手に進めるんじゃない。
え、ボスは、ノンの事、嫌いですか。
あ、いや、別に嫌いという事はないけど。
な、ノン、ボスだって好きだって言っているから大丈夫だよ。
しばらくは、こんな感じで酔っ払いの会話が続いてノンちゃんが言い出した。
分かったわ、それならプーケットで悪さができない様に今日は帰さないからね。
朝まで飲んじゃうんだから。
ママ、ママ、テキーラ、お願い。
ママも一緒に飲んで、Kenもね。
そんな騒ぎを嗅ぎつけてか、他の2人の女の子も一緒に飲む~と寄って来て、あっという間に深夜の大宴会が始まってしまったのだった。
つづく、、
★★★
【おまけ】
しこたま飲んだ。
もうこれ以上は無理とギブアップしたのが、朝の4時。
流石に、Kenも酔っぱらって運転できる状態ではなかった。
知り合いのなのか、別のトゥクトゥク運転手にアジアホテルまでと頼んでくれて無事ホテルに帰還出来たのだった。
バタンとベッドに倒れる前になんとか気力を振り絞り、モーニングコールを9時にプリーズと頼んでドタンキュー。
強烈に長いバンコク2日目の夜に目を閉じたのだった。
★★★
【おまけ2】
Good Morning Mr xxxx.
朝9時ピッタリにモーニングコールが入った。
Thank you、と答えたが全く睡眠が足りない感じだった。
飛行機の事もプーケットの事も全て忘れてもう一度眠る事が出来ればどれほど幸せだろうと目を閉じかけた時、携帯電話のアラームがピピピピッと電子音を立てて9時05分を知らせてくれた。
ヤバかった。
危うく、2度寝するところだった。
うッしと、気持ちを奮い立たせて飛び起きて、全裸になってシャワールームへゆっくりと向かった。
熱いシャワーをたっぷり浴びて強制的に目を覚まし、ササっと荷物をまとめてチェックアウト。
カウンターの女の子が、快適にお過ごしいただけましたかと聞いてくれたので、ありがとう最高だったよと親指を上げて答えて置いた。
それは、よろしかったですねと丁寧に返答してくれて、お客様には1週間後に再度予約を頂戴しております。
2泊の予定となっておりますが、間違いございませんかと確認してくれた。
ああ、間違いない。
1週間で戻るから、またよろしく頼むよ。
かしこまりました。では、お気をつけて行ってらっしゃいませ。
タクシーが必要でしたら、ベルボーイにお申し付け下さい。
気持のよいサービスだった。
ベルにチップを渡して、空港まで急ぐ様に伝えてもらった。
空港へ向かう高速道路は空いていた。
離れて行くバンコクの高層ビルを眺めながら、昨日の夜の事を思い出していた。
ノンちゃんの事、忘れられるだろうか、、、
★★★
【おまけ3】
空港に到着したのは出発の1時間半前だった。
プーケット便は国内線だからチェックインには十分な余裕があった。
ラウンジも利用することが出来るとの事だったが、旅に来ていると言う雰囲気を感じたくてゲートへ向かう途中のカフェでコーヒーを飲むことにした。
今朝は慌ててチェックアウトしたから水しか飲んでいない。
朝飯も食っていないが、全くそんな胃の調子じゃなかった。
体には、まだテキーラとノンちゃんの体の感触が残っていた。
そして、テーブルに運ばれてきたコーヒーを一口啜った時だった。
ブーブーと携帯のバイブがポケット中で太ももを揺らした。
ん、何だろ?
左手で携帯を取り出してみると、、
”Thank u last night. Wait for you. xxx Non
ノンちゃんからだった。
★★★
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