(8) タイ、バンコク、トゥクトゥク物語【ラミネートされたネオン街】

今回の旅は、計画的に出発した分けでは無かった。

出たとこ勝負でタイにやって来たのだった。

それでも、唯一目的にしてあったのは、本物のタイシルクでオーダーメイドのスーツを作る事。

この目的は、少し難のあるインド人テーラーだったが、まずます満足の内に終える事が出来た。

今は、運転手のKenに誘われるがままに、何やら面白いというレストランに向っている。

流石に夕刻のバンコク、雨が降っていなくとも結構渋滞している。

Kenも知りうる限りの裏道を抜けて、何とか渋滞を避けようとしているがなかなか思うようには進んでいないようだった。

ボス、お待たせしました。ようやく着きました。

そんなに遠くないと言っていたにもかかわらず小一時間程もかかったからかなり渋滞していたのだろう。

おかげで腹がペコペコになっている。

広い通りに面したデカいレストランで、赤と青のエビのネオンが目立つ店だった。

店の前に降り立つと、

welcome, ウエルカ~ム!!

サワディカー

ぃらッしゃませ~!

ウエイトレスの女の子たちがタイ語訛りの日本語で迎え入れてくれた。

へ~、こんな風になっているのか。

店の中には、大きな水槽が作ってあり、その水槽を囲むようにテーブル(4人~6人掛け)が設けてあった。

この時間帯、まだ客は多くはなかった。

席について直ぐにビールを注文すると、係の女の子がワゴンカートを押して持って来た。

今日は、バドガール(バドワイザーのキャンペーンガール)がピッチんパッチんのワンピを着てサービスしてくれるとのことでウキウキモードが上がっていく。

この娘たちは、各テーブルの担当となり、客が帰るまでずっと接客をしてくれるのだ。

席の近くで立って待機して、客のビールが無くなると氷と共にお酌をしてくれるからすごく楽しい。

”ありがとう”と声を掛けると、”マイペンライ・カー”(どういたしまして)と笑顔で答えてくれる。

正直、この笑顔でお酌してもらったビールが抜群に美味しく感じるのは私だけではない筈だ。

さて、ビールで乾杯をして、今日一日の運転を労った。

とても長い一日で、充実のタイ旅行二日目を満喫している。

こちらが、竿とエサです。

たくさん釣って、たくさん食べて下さいと、1mぐらいのエビ釣り用の竿を渡された。

小さな赤い練り餌の様なものを釣針に付けて、水槽の中へポトンと落とす。

しばらく待つと、ウキがピクピクッと動いてバシッと竿を合わせると、プルプルプルっとエビの釣れた感触が手に伝わり、両手を大きく横に広げた手長エビが釣り上がって来た。

面白い。

元々、釣りは趣味の一つ。

例えエビが相手でも、釣り竿を通して感じる獲物のプルプル感には興奮を覚える。

ものの30分もしない内に、二人で10匹ほどのエビを釣って調理してもらうことにした。

半分は、炭火で丸焼きに、もう半分は、酸味と唐辛子の効いたタイ風の緑ソースが添えられたエビ料理に仕上げてもらった。

どちらも新鮮で臭みもなく、とても美味しくいただけた。

釣りをしたせいか、かなりゆっくりと時間を掛けた食事となり、ビールも2倍で、ほろ酔い気分もダブルアップ。

ああ、楽しい。

ちょっと、トイレ。

ふー。

ジッパーを下ろして、見下ろして、元気かお前と声を掛ければ、ヒックと返事。

じゃーじゃー済ませて、ブラりんこ、また後でな、、

ふー、この楽しみは、女には分かるまい。

さて、お勘定を済ませて表に出ると、今宵も南国アジアのゆる~い熱気が纏わり付いてくる。

さて、お次は、何だっけか?

何やら、ショーを見に行くと言ってたようだったが。

Ken、こんな時間になったが、ショーなんてやってるのか?

ですね、流石に今日は終わってしまっているでしょう。

また、次にしましょう。

ボスは、明日からプーケットに行ってまたバンコクに戻って来るんですよね。

ああ、そうだ。1週間ほどだ。

だから、スーツも預けたんだから。

そうですよね。

ちなみに、ホテルはまた、アジアホテルですか。

そうだ。戻ってからは、2泊の予定だ。

分かりました。

では、その時に時間があれば、ショーを見に行きましょう。

ゴソゴソ、ゴソゴソ、

そこで、今夜の予定なんですがと言いながら、何やらラミネートされたパンフの束を渡された。

パラパラめくってみると、ゾウに乗っている写真やワニやヘビを扱っている動物パーク、水上マーケット、アユタヤ訪問等々、案内できるツアーの数々だった。

しかし、大半が日中のアクティビティーで、夜に行けそうなものは無さそうだった。

そんな中、Kenがニコニコと手を伸ばして、最後の方のページを取り出した。

こっちの方ですよ。

わ~お、なるほど、わ~お、おーッ。

それらは、大人の男を魅了するに十分すぎる程のナイトな情報だった。

もちろん、その中にムエタイ(タイのキックボクシング)観戦やオカマショーなどの情報も混じっていた。

ボス、これですよ。このレディーボーイのショーにお連れしたかったのです。

そうか、タイではオカマと言わずレディーボーイと言うのか。

ちなみに、ニューハーフとも言うが、それは日本人相手の言葉だと言っていた。

写真を見る限り大きな舞台上でラインダンスを踊っているから、かなり本格的なものなのだろう。

ま、それは、次回のお楽しみという事にして、今の時間帯となると、、、

やはり、キックボクシング。

じゃ、ねーよな。

そう、ピンクよ。

夜と言えば、ピンクかブルーか。それが世界共通の男の言語だろう。

どうです、どれか気になりますか? ボス

デへ~~、どれもこれも気になるじゃないか。

カラオケ、萌えカラオケ、、ふむふむ、かわいこちゃん勢ぞろい! おーッ。

クラブ、ディスコ、GOGOBER、それから、

レ○ビアンショー、○○○○ショー、○ープ○○○、○ー○○○レストラン、、、

うーむ、

これらを制覇するには一体どれほどの日数のホリデーが必要なのだろうか。

しかし、身体は一つ。行けて一つか二つか。

出来れば、ノンちゃんのお店にも少し顔を出したいところだし。

ボス、明日のフライトは何時ですか。

早くはない、昼過ぎの筈だ。

なら、大丈夫ですね。

今夜は、遊べるだけ遊んでしまいましょう。

OK、分かった、任せるよ。

つづく、、、

★★★

【おまけ】

Kenの提案で、まず、日本人御用達のタニヤ通りを覗いて見る事になった。

この時間帯になれば渋滞の方はかなり緩和されており、トゥクトゥクは快適に夜のバンコクを走って行く。

この辺りですよと到着した通りの角に愛車を停めて、知り合いにちょっと見張っててくれと言い残し路地の中へ連れて行ってくれた。

路地通りの両側には雑居ビルが立ち並び、ビルと言うビルに日本語でネオンの看板が光り輝き、1階では派手な衣装の女の子達が客に声を掛けている。

お客さ~ん、かわいい娘いっぱいよ。

喉、渇いたねー、一杯飲みましょう。

社長さん、そこの社長さん、女の子いっぱいだよ。おっぱい大きいね、大好きでしょう、ハハハ、スケベ、とネオン街ならではの正しい日本語が耳に飛び込んで心地よい。

Ken曰く、この通りは1970年代にできましたから歴史が長いですね。

凄いな、日本の先輩たちは。

こんなものを何十年も前にみんなで創ったのか。恐るべしジャパニーズビジネスマンと言ったところだな。

★★★

【おまけ2】

タニヤ通りを抜けて左へ進むと歩道に屋台がぎっしりと軒を連ねていた。

やはり、アジアの夜には裸電球のオレンジ色が良く似合う。

思わず、炭火であぶって串に刺した豚のバーベキュー(焼き鳥みたいな感じ)を一本買ってしまった。

一本5バーツ(20円)だった。

ピリリと辛いバーベキューをかじり、汗を掻きながら歩を進めているとKenが話しかけてきた。

ボス、この辺りには、GOGOBARがたくさんありますよ。

一軒覗いて見ましょうか。

ちなみに、このGOGOBARと言うのは、ベトナム戦争の時にアメリカ人兵士の為にできた歓楽街なんですよ。

へー、そうなんだ。

★★★

【おまけ3】

ミラーボールがギラギラと光を反射して、強烈なボリュームのディスコミュージックがかかっていた。

席に座ると、目の前にポールダンスで踊る姫たちがこちらに向かって手を振りウインクしてくるのだった。

どうやら、ここはこの世の竜宮城なのかもしれない、、

★★★

*ノンちゃんゴメン、もうすぐ行くからね。


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