(7) タイ、バンコク、トゥクトゥク物語【インド人テーラー】

初タイ、初バンコク、初タイ航空。

ファーストナイト、初マッサージ、初バービア、初お寺。

立て続けに初体験をいくつかこなし、何となくではあるがタイの事が少し分かって来た気がした。

2軒の土産物屋では1時間ほどの時間を潰して同僚達への土産を買っておいた。

一緒に付いてくると言ったノンちゃんも慣れないガイド役で流石に疲れたか、そろそろ家に帰ると言い出した。

時刻は、この時点で17時を少し回っていた。

Kenが説明してくれたところによると、彼女は今夜も仕事があるから一旦家に帰って身支度が必要なんだとか。

なるほど、そう言う事か。

まったくタイ語の出来ない私のガイド役にも関わらず、快く引き受けてくれたことに感謝して少し多めにチップを渡してお礼を言った。

ノンちゃん、ありがとう。とても楽しかったよ。

ううん、大丈夫。私も楽しかったよ。コップンカー(ありがとう)。

Kenにトゥクトゥクで送ってあげようと提案したが、その必要はないとキッパリと断られた。

ボス、大丈夫です。

代わりにタクシー代を渡してやってください。

まして、もう渋滞が始まっている筈です。

ノンを送っていたらテーラーに行く時間が無くなりますよ。

なるほど、そりゃKenにとっても大問題だ。

もし、時間が無くなって私がテーラーに行く事を諦めてしまったら手数料がおじゃんになってしまう。

それでは、何のために一生懸命サービスしているのかも分からないし、ノンちゃんを呼んだ事が裏目に出てしまう。

大方の事情は呑み込めた。

ノンちゃんはタクシーを止めると、手渡したチップとタクシー代を両手に挟んでもう一度ワイをして礼を言ってくれた。

そして、私の手を握って、今夜もお店で待ってるから遊びに来てねとタクシーに一人乗り込んで行ったのだった。

今夜の予定は未だ決めていなかったので、チラッとKenの方を見ると、時間があったらボスを連れて行くから早く行きなと助け船を出してくれたのだった。

偉いぞKen、ベストな対応だ。

ノンちゃんを乗せたタクシーのドアを閉めて見送ると、Kenが早速確認して来た。

では、ボス、次はテーラーに行きます。

優しい口調だが、ここは譲りませんよとの意思が感じられる一言だった。

ああ、頼むよ。ブ~ン。

テーラーまでは、ほんの10分ぐらいだった。

その間、1人になったトゥクトゥクの後部座席でノンちゃんが座っていた席を手で撫でて一人で乗るには広すぎるなと寂しさが込み上げてきた。

★★

ボス、到着しました。

ほー、ここか。

店は、高架鉄道の下にある細い路地の角にあって、私達が到着するの待っていたかのように店主がガラス戸を押し開けてくれた。

Hello my friend!

なんだ、なんだ、、いきなり友達かよ。

この挨拶、そして、店主の風貌、ヒゲの感じ、間違いなくインド人だ。

これまでにも、別の国でテーラーを覗いたことはあったが、シルクを扱う店には何故かインド人が多かった記憶がある。

インド人がどこにでもいるのか、歴史的にシルクの商売をしているインド人が多いのか理由は良く知らないが、とにかくまたインド人だなと感じたのを覚えている。

Kenは路地の奥にトゥクトゥクを停めて、玄関先に丸椅子を出してタバコを吸い始めた。

片手でガラス扉を開けて顔だけを覗かせて、ボス、終わったら声を掛けてくださいと言い、店主に目配せをして扉を閉めて丸椅子に戻った。

店主は、にこやかに挨拶を投げ掛け、今日はどんなものを仕立てましょうかと、やる気満々で聞いて来た。

そうだな、スリムな感じに見えるように、薄く縦縞の入ったシルクをいくつか見せてくれと頼むと、店主は人差し指を上に上げて、承知しましたと振返って生地の棚を探し出した。

これなんかいかがですか?

最初に見せてくれたのは、ド派手な金ピカの生地だった。

店主のオヤジは、間違いなく大金持ちに見えますよと言い、ハハハと笑った。

何が、ハハハだ。

今時こんな金ピカ、お笑い番組でも見なくなったぞと呆れ返るほどの一品だった。

ま、これを持って帰ればヒーローにはなれそうだったのでホンの一瞬、好奇心が首をもたげたが、いかんいかんと振りほどいて我に返った。

違うよオヤジ、もっとシックな奴だ。

ブラウン系の落ち着いたやつを見せてくれ。

丁度こんな感じのやつだと店に置いてあったファッション雑誌の写真を指差した。

ああ、分かりましたと言わんばかりに口を開けて、また指を一本上に向けて、生地を探すオヤジ。

大丈夫か、コヤツ。

少し不安になって来た。ちゃんとスーツは仕立ててくれるのだろうか。

次に見せてくれたシルクは、なかなかの品だった。

見た目にも落ち着いた風合いで艶があり、色も好みのダークブラウンだった。

よし、この生地は気に入った。

値段を聞くと、日本円にして100,000円程になると言う。

うーむ、日本でこれほどのシルクを仕立てて10万なら安い。店によってはもっともっと高い筈だ。

しかし、ここはタイ。まして、相手はインド人だ。

間違いなく、値は下がる。

オヤジ、10万円というのは仕立て代が入っての値段なんだなと念のために確認しながら、他の生地に目を移した。

いかがですか、お気に召しましたか。

なかなか、お似合いの色だと思いますよと、生地を折り返して肩にかけて鏡の前に立って見せてくれた。

確かに、生地と色合い共に合格点で文句は無かった。

後は、値段だ。

これまでの経験上、インド人との値段交渉が一番緊張する。

なんせ、彼らには適正価格という考え方が存在しないからだ。

同じ品物でも、金持ちならたくさん払えば良いじゃないかと考えている筈だ。

そんな事を頭で考えながら、よーし決めた!

オヤジ、30,000円ぐらいなら買うが、どうだ。

オヤジは、横を向いて無言になった。

おッと、これは、いい線いったんじゃないか。

こちらが、あまりにも安い値段を言ったときは、みな笑い出す筈だ。

なのに、今回は無言だ。

オヤジの頭の中は、さて、どうしようかと悩んでいるに違いない。

OK, My friend、、、

来たな! どうした、オヤジ。

この生地は、タイシルクの中でも高級品の部類だ。

この店でも、これが最後の一本で色も柄も良い。

それを、3万って事は無いだろうと少し泣き落とし気味の説明が入っている。

やはり最初に言った10万円というのは、挨拶みたいなものだったのだろう。

既にその値段には全く未練がないようだった。

ミスター、

来たな!

もう少し何とかなりませんか。

あくまでも値段は言わずに、何とかなりませんかと来た。

いやいや、3万円ぐらいが妥当なところだろう。

勘弁してくださいよと、首を左右に振って俯いて、指で2(Vサイン)を作っている。

きっと、20,000バーツ(約55,000円)という意味なんだろう。

よし、ならば少し刻んで、1と5を指で作ると、意外とあっさりと降参してきた。

分かりました。それで行きましょう。

結局、オヤジは電卓に15000バーツという数字を打ち込み、これでようござんすねと確認して来たのだった。

値段の交渉が終われば、後は採寸をしてもらう必要がある。

肩幅と腕の長さを計って、カットの仕方や肩の仕上げ方、ボタンはシングルかダブルかという質問があって、オヤジは手際よく答えを採寸用紙に書き込んでいる。

その姿は、プロのテーラーのそれになっていたから安心した。

ミスターは、日本人にしてはスマートで背が高いですねと少し世辞を言いながら、ズボンの採寸に取り掛かる。

裾はシングルかダブルかと聞きながら、メジャーをスーッと上にやって、股下で止めた。

その時だった。

オヤジの手の甲が、私の大事な部分にニュッと少し当たった。

おッ、

思わず、声を出して腰を引いてしまった。

オヤジは、じっとしててくださいと言う顔つきで一歩前に来てと促すが、、

今のは、間違いなく確信犯だろう。

これまでテーラーを利用したことは何度かある。

だが、どの店でも、私の玉に触れるような粗相はされたことが無い。

何食わぬ顔で採寸を続けるオヤジ。

今は、ももの辺りを丹念に採寸して数字を書き込んでいる。

オヤジの手が触れる度に、ゾーとする感覚に見舞われ、とにかく早く終わってくれと願ったタイでの初テーラー体験だったのだ。

つづく、、

★★★

【おまけ】

採寸と支払いを済ませて引換証を受け取って店の外に出た。

いかがでしたか、ボス。

すかさず、Kenが聞いて来たから、こちらも質問で返答した。

あのオヤジ、普通じゃねえだろ。

ちょっとオカマ入ってるんじゃないかと店の方を親指で指してKenに聞いてみた。

たぶんそうだと思いますよと、ちょっと笑っている。

きっと、Kenは知っているのだ。

この店のオヤジに触り癖のある事を。

★★★

【おまけ2】

ボス、この後どうしましょう。

お腹が減ったのではありませんか。

ちょっと面白い店に行きませんか。

面白い店? どんな店なんだ。

エビ釣りが出来る店でね、釣ったエビは直ぐに調理してくれるんです。

行ってみませんか。

おお、釣りは好きだから、行こう行こう。

分かりました。では、行きましょう。

あ、それから、飯が済んだら、ショーを見せてくれる店に行きますからね。

ほー、ショーとは、どんな、、

お楽しみですよ。ブ~ン。

★★★

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