【どこ行くの報】衝撃事件簿、ベトナムのタクシー

ホテルの前で流しのタクシーに乗り込んだ私、念のため運転手にレストランまでと告げた後、続けざまに、そのレストランは有名かと聞いてみた。

運転手は、ゆっくりと車を前進させながら、これまた、ゆっくりと頷き運転に集中した。

ん、こちらの言ったことが分かったのだろうか。

今の感じ、英語を理解したとは思えない素振りだ。

まあ、ローカルタクシーで英語力を求める方がおかしいはずだ。

とにかく、前に進んでいる、良しとしておこう。

しかし、このどこへ向かっているのか、さっぱり分からないと言うのはスリルがあってなかなかに楽しい。

ポーター君が告げたお勧めレストランは遠いのか近いのか。はたまた騙されて別のぼったくりレストランに連れていかれるのだろうか、、

鬼が出るか、蛇が出るか。

いやいや、まだそんなレベルじゃないか、宵の口だ。

今のところ、吉と出るか凶と出るかぐらいのもんだろう。

そんな不安もよそに、ものの5~6分で到着したようで、飲食店が数件並んだ通りに止まって、あの店だと指で差して教えてくれた。

何だ、親切じゃないか。顔に笑顔はまったく無いが、まずまずまじめなベテランドライバーってとこか。

よし、これなら使えるかもな。タクシー代を清算しながら聞いてみた。

Do you want to work tonight? I need a taxi.

どうだ、英語が分かるのか?

….

無理だったようだ。

ま、仕方ない。

Never mind. Than you. と、英語の分からない彼にお礼を告げて気持ちをレストランの方に集中させた。

ちなみにだが、上記のような状況下で運転手に今晩また運転してほしいと頼むとき、

間違っても、

Are you free tonight? とは尋ねないよう初心者は注意してほしい。

それでも、通じるだろうが、

英語達者な奴なら、俺はそっちの気はないぜッ、って笑われるかもしれないからだ。

↑実際、このジョークをかまされたことがあったからね。いや、友達の話だが、ホントだって。

さて、到着したレストランは、古い大きな住宅を改装したような内装で、外国人客もそこそこいたから安心して注文できた。

ウエイトレスのハノイガールも英語で特段困ることなく丁寧に接客してくれたし、お勧めの揚げ物料理とパンの様な食い物(こちらも揚げてあった)を注文し、締めにフォーをお願いしておいた。

もちろん、ビールはベトナムビールを注文した。

ビールは、緑のラベルが印象的だったこのサイゴンビアーだったと思う。

(どこへやったか、自分で写したも写真がどうしても見つからないから。サンプル写真をお借りしました。)

初めての本場ベトナム料理だったが、味はどれも合格点だった。

ただ、どれもこれもパクチーが大量に入っているので苦手な諸氏にはきついだろう。

ま、それも旅の楽しみと考えれば何とかなる。

こちら、酒に関しては、それほど強くない。ビールを2本も飲めばほろ酔い気分になれる口だ。

よーし、お腹もふくれた事だし、チェックだ。

しっかりと最後まで面倒見てくれたハノイガールに3ドルほどのチップを店の会計とは別に手渡してレストランを後にした。

時計を見ると、まだ夕刻。少し散策してみることにした。

ホテルからも車で5、6分のところだ、問題ないだろう。

勿論、外へ飛び出す時はガイドブックの様な野暮なものは持たない主義だ。

まあ、それでも最悪の最悪を考えて、ホテルカード(住所が載っている)だけは財布に忍ばせてある。

夕暮れの、街の明かりが灯り出すハノイ、見るものすべてが新鮮だった。

一階の玄関先で商売を営んでいる店がズラリと並んでいた。たぶん、奥の間、2階が住宅を兼ねている店舗型住宅の密集エリアなのだろう。みんな店じまいをしている光景だ。

確かに、アジアではよく見かける光景だ。地方部に行くと工場なんかで働く人が多いが、街中にはそれが無いから生活必需品関係の店を営むことが多くなるのだろう。

日本なら、夕暮れの商店街と言ったところか。

ここで、気が付いたのは、店先でみんなが集まって食事を始めたことだ。

あまり、ジロジロ見るのも失礼だが、横目で見た限りでは5~6人ぐらいで集まり、小さなテーブルに小さな腰掛けで夕食を取る準備をしている。家族同士ではなく、ご近所さん同士って感じだった。

なかなか風情のあるシーンで、少し昔の日本を思い出した。

しかし、そんなゆっくりとした時間の流れを感じていたのも束の間、向かいから数人の制服姿が忍び寄る。

なるほど、あれが公安警察だな、きっと。ガイドブックに載っていた奴らだ。

まだ、何も悪いことはしていない。タバコだって吸っていない。しかし、こちらは、赤ら顔の日本人が独りでぶら~り、ぶらり。いつ何時、難癖をつけられても文句の言えない状態だ。

距離が縮む、テクテクテク、すれ違いざま、

彼らが横を通り抜けようとするその瞬間、

抑えきれない衝動と、冒険心に火がついてしまうのか、ネタが欲しいのか、、

敬礼してしまった。

気付かれたと思う。

しかし、足のピッチを上げて、すたこらサッサ。

後頭部に、多少の視線を感じたけれど、別にこれも悪いことをしたわけじゃない。

チョット、心臓ドキドキしましたが。

そんなこんなで、次の交差点まで進んでくると、

おやおやんッ、今度はヘルメットに制服姿だ。

おっと、これはいかんぞ、軍人さんだ。

それも、肩には機関銃。

これに、おちゃらけて敬礼して、ズドンと行かれたら洒落にならん。

ここは、素通りだ。

しかし、何かやってみたいという恐ろしい衝動が込上げる。ダメダメ。

そうこうしていると、ホテルの近くまで戻っていることに気が付いて、やっぱりスグ近くだったのね。

OK、それなら、一旦部屋へ戻って臨戦態勢を整えてとも考えたが、今夜は単独行動だ。特段その必要もない。

このまま、突撃だ。

夢にまで見た、ベトナム・ハノイ。十数年越しのモテ期が今夜俺の手に、、フフフッ。

よし、タクシーだ。

ここは、ホテルに目と鼻の先の割と大きめの交差点。

どの角で待てば、って、どこでも同じだ。初心者じゃあるまいに。

右手を上げた。数台が無視して通り過ぎていく中、

反対側から、無理やりUターンして興味を示してくれた緑色のタクシー運ちゃんが、キーッと車を止めた。

Mr.(=やはミスターと言われた)。Taxi?

そうだ。

ただ、ちょっと待てまて。今回は、流石に英語ができることを確認しておねば如何ともしがたい。

こちとら、全く街の様子を知らない、ド素人。ハノイ・ファーストナイトの浮かれポンチだ。

OK, Mr Driver. Do you speak English?

ドライバー君は、Yesと大きく頷いて、Where you go?

チョット、怪しいなあ、どうする、、

ま、若くて、まじめそうだ。

何を根拠に「まじめそう」と思ったのかは分からないが、たぶんいつも当たらないカンだ。

Ok, 君に決定! 

独りでつぶやいて、彼の隣、助手席に乗り込んだ。

Let’s go! go,go.

こちらのハイテンションの理由を知ってか知らずか、とにかく、彼も OK, go,go と応じてくれた。

Mr. ミスター、お客さん、ところで、どちらまで?

おっと、こりゃ失礼、カラオケ、カラオッケ、Karaokeだよ。

ん、

Do you know Japanese Karaoke?

いや、知らんけど。

えー、、、ッって、

あかんやんッ、

つづく、、

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