DNAに刻み込め

こうも長期間、自由を制限させられると、初体験が故にどうすれば良いか分からない。

だからと言って、それなりに収まっている本棚や不要なグッズの整理など、よーし、この機にやってみるかなんて考えもしない。

しかし、今回の時間の余りようは尋常ではない。

遂に、そんな私をも、何かに手を伸ばそうかと魔が差して来る程なのである。

人は大概において、現在、過去、未来の3次元を好き勝手に行ったり来たりしながら日々の生活を送っている。

現在は、家事や仕事とし、

過去は、甘い酸っぱい系と、ほろ苦い系の二系統に分類して普段は片付けてある。稀に暴れだす危険性がるから取り扱いには注意が必要だ。(=焼け木杭に火がつくと言うやつね)

未来は、子供の成長と、海外旅行の様なご褒美的現実逃避のことだろう。

しかし、今回のように、時計の針が普段とは違う秒を刻むとき、時として、喜怒哀楽のスパイスを意図的にふりかけ、不安な日常に彩(いろどり)を添える事もある。

精神的に弱いと、スパイスの加減を誤って本能が求める酒池肉林の世界に足を踏み入れ、狂喜乱舞して我を失う事もある。

今、世の中が怪しい気の流れを放っている事は、陰陽師などに聞かなくとも分かるレベルだ。

だって、おかしいだろう。

ここ何十年、それこそ20年なのか、30年なのかも判らぬ程、一度たりとも触ったことの無かった古いアルバムを手に取って、パラリ時間旅行に出かけようというのだから、気の乱れは明白だ。

ホコリを払うついでに、表紙を数回撫でてみた。

ジーン、

少し蟀谷(こめかみ)と太ももあたりに鳥肌が立ちそうな感覚がある。

ページを1枚めくった。

瞬時に蘇る、あの強烈な思い出達が、順番を間違えて断片的に表れては消えて行く。

記憶の整理整頓が出来ていないままに始めたから、あっちもこっちも、年代だって、1年の時か、2年の時か、、

ページ毎に、自分の写った写真に笑顔を送り、そうそう、この時は、あーだった、あんな事もあったっけと一人封印していた記憶と久しぶりにご対面だ。

記憶が線で繋がって、それなりの整理がついた頃が丁度最後のページだ。

なるほど、と現実に戻ろうとしたその時、2冊目のアルバムの奥に収まった見覚えのある箱型のケースを発見した。

おー、これは、、カセットテープ。

既に、ラジカセ(カセットデッキ)なんて機械はどこにも見当たらない。

曲は流せないが、カセットの背中にひと工夫してあるアルバム名や歌手の名前にちょっと痺れた。

表(おもて)を見ると、1、2、3、と順番に歌のタイトルの丁寧な書き込みがあり、当時、車に乗って、カーステレオにテープを差し込み、頭出しの早送りをしていたことを思い出した。

あの頃は、皆が車に乗っており、流行の一曲を素早く聞かせるための努力を惜しまずに自慢していたものだった。

もう少し思い出に浸ってみようか、、

1冊目を片付け、2冊目のアルバムに手を掛けようとして、止めておいた。

また今度だ。

今日は、平凡な日曜日の筈だった。

これ以上は危険すぎる。

酒の二日酔いなら、月曜日だって対処できる自信がある。

しかし、思い出のそれは惨(むご)い。

凹むとか、気合が入らないとか、そういった類のものじゃない。

思い出した昔の記憶を現実世界に乗っけてしまいそうになるから質が悪いのだ。

おっと、いつも通り長い前振りで本題を忘れるところであった。

ごめんチャイ。

本日のお題は、DNA。

私は、DNAの事を考えるのが大好きだ。

これまでも、何回か記事の中に登場しているキーワードの一つだろう。

今、この自分が起こした行動がどのように記憶の中に埋め込まれ、どの程度、次へと受け継がれて行くのであろうか。

この事を考えながら行動していると、どうしても不必要な悪さをしてみたくなるのだ。

不必要で未経験な行動を遺伝子情報として体に埋め込む時、DNAの幹部会ではどんな議論をするのであろうか。

今の、必要か? 

いや、いらんやろ。

はーん、じゃ何か、48手、全部知ってんのか、やったことあるんか、、

言うとくが、俺は、あと3つ知らんぞ、、

おっと、失敬。

単純に考えると、受け継いできた粗方の基本情報をDNAに埋め込み、己が経験をプラスして、子作りを通して伝達するのが手っ取り早い。

しかし、それでは、遺伝子がお家単位で自由気ままに独自進化してしまい、その内違う生き物になってしまう。

だから、動物も人間も大枠の情報はDNAで伝え、細かい情報は、時のニーズに合わせて伝達しているようである。

馬やキリンは、生まれ落ちた瞬間から立ち上がって歩こうとする。

当然だ。

さもなくばガブリ喰われてしまうからだ。

これは、遺伝情報として授けられたもので、生まれてから学んだものではない。

しかし、エサの取り方は大体の動物が生まれた後に親から教わるのではないだろうか。

キリンさんを例にとると、長~い時間をかけて、その首を伸ばしたはずだ。

たった一頭が、叩いて叩いて首を長くして、他の仲間を全部やっつけて、尚且つ自分の遺伝子だけを残したわけではない。

周りのみんなで願い、競って、隣の子より少しでも高いところに生えている木の芽を食べなさいと囁(ささや)き続けた結果に違いない。

あと少しよ、

お母さん、届かないよー。

ダメダメ、そんな事じゃ、こうよ、こうするのよ、見てらっしゃい。

そう、そこでグーっと伸ばして、ホラもう一息。

違うわよ、足を伸ばすんじゃないの、クビよ首。

どうだろうか。

このキリンさんの努力と根気を思う時、なんだってできそうだし、諦めてはダメだと力が湧いてくるはずだ。

加えて、人は動物たちと違う特殊な能力を持っている。

それが、今書いているこの文字というやつだ。

DNAをも凌駕する、文字という自由な伝達能力で人はその存在感を高めて来たのである。

一昔前、図書館へは一部の人しか行けなかった。

だが、ある時を境に百科事典が一般家庭に現れた。

その姿が消えた今、情報はネットの中に受け継がれている。

簡単にアクセスできるネット情報を思う時、反対に文字でないDNAが愛おしく思えるのもまたDNAのなせる業なのかもしれない。

おまけ、

よーし、全員来たか。

親戚一同の皆様、お集まりいただきありがとうございます。

今回の伝達事項はたった一つです。

遂に、我々の悲願であったハンサム・ボーイDNAの育成に入ることに決定しました。

各々帰宅されたと同時に、鏡の横、風呂場にキッチン、よく目にする場所にこの写真を貼って、

強く、強く願ってください。

こうなるゾ。

 

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