この社長、凶暴で理不尽という癖があります。
サラリーマンの楽しみの一つがアフター5(ファイブ)なのは言うまでもない。
頑張って働いて金を稼ぎ、明日への活力と酒を飲む。
焼き鳥、居酒屋、もつ鍋屋、
寿司屋、イタ飯、中華飯。
どの選択をイメージしても堪らなく愛おしい存在ばかりだ。
仮に、これを取り上げられたら会社へ行く理由が無くなって、きっと行かなくなってしまうんじゃないかと心配するほどだ。
だが、その楽しいアフターファイブも参加するメンバー構成によっては地獄の飲み会へと変貌することもあるから気を抜いてはいけない。
今回は、ある人物を取り上げて、大好物のテーマ、理不尽を考察してみることにする。
★★★
この界隈では、理不尽社長として名を馳せているそのお方は、年の頃が65歳ぐらいと推定されていた。
肉付きが良く、がっしりとした体つきで、柔道でもやっているような体格だった。
168センチ、100キロぐらいの感じをイメージいただければバッチリだ。
首が太く、顎との境界はほとんど見当たらず、高く盛り上がった肩の筋肉から顎を通り越して頬までが一続きになっていた。
いわゆる、ジャミラスタイルと言えば分かり易いだろう。
肌の色は日焼けが激しいのか焦げ茶色で、額(ひたい)にはくっきりと3本の縦皴(たてじわ)が刻まれていた。
髪は天然パーマなのか縮れ気味で、おでこの生え際にはびっしりと油が浮き上がっていた。
この油、綿棒で掬い取ればきっと火が点くほどの上質のもので、粘性だけでなく臭いもかなりキツそうだった。
バカヤロー、飲め!
はい、いただいています。
大将、ビール追加!
アイよー、ビール追加!
この会話、店の名物みたいなもので、彼らが入店してきてものの2分ぐらいで交わされる会話だった。
彼らは7~8人で来店し小上がりの席を予約するのが常だった。
入店と同時に、一杯目の中ジョッキが提供されて、中腰のままで乾杯!
各々がカバンを置いたり上着をハンガーに掛けたりしていると「お代わりッ!」と二杯目の注文が入る。
この社長、大手ゼネコンからの設計の仕事を請け負っている会社の社長さんで気性は極めて荒っぽかった。
常に、立ち上がって吠えている熊みたいな感じと言えば比較的分かり易いかもしない。
しかし、あれだけ日焼けしているのに普段は内勤だと言うのがおかしかった。
どう見ても、現場一筋って感じなのに一体どこで日焼けしたのかとても不思議な方だった。
きっと、地黒なのかもしれない。
理不尽社長は、右手の一杯目を飲みながら左手で二杯目をジョッキを握り、両隣に座らせた部長から営業成績の話をまずは聞く。
どんな結果を発表しているのかはよく聞き取れない。
うんうんと頷いたかと思えば、直ぐに、バカヤローッ、だからお前たちはダメなんだッ!給料泥棒するんじゃねえッ。
会社潰すつもりかッ、金返せ!
嫌なら辞めてもいいんだぞ等々のセリフをバカでかい声で喚(わめ)き散らすのだ。
机もバンバン、叩く叩く。
その間、部下は全員正座でビールを飲み続けている。
休んでいる暇はない。
酒の弱いやつでは、きっと務まらない職場だろう。
こんな会社に間違って入社してしまったら、それこそただの地獄だ。
一通り仕事の話が終わる頃には、10リットル入りのビール樽が空になっている筈だ。
店のオヤジさん曰く、あの社長が予約して来る日は、ビール樽を3本は追加注文しておきますと言っていたのを思い出す。
仕事の話に続いて、それぞれの家の報告を順番にさせて行くのだった。
この手の話は、若手係長級から血祭りにあげられていくのだパターンで、特に、妻帯者を狙っていた。
と言うのも、嫁の言動及び立ち振る舞いに厳しく言及するのが好きだったのだ。
嫁には、こう言え、ああ言え、と助言し、結果の良し悪しにまで口を出し、とにかく命令して愛せよと注文を付けて来るのだ。
この辺りまでは、何とか合わせて返事している社員も、次の質問にはあきれ返るばかりだった。
で、あっちの方は、どうなんだ?と意味深に聞くのだ。
いつなんだ?
最後に、その奥さんと目合(まぐわ)ったのは?
こんな常軌を逸した質問が許されるのだろうかと同僚たちも同情はするものの、聞かれたのが自分じゃなかった事にホッとしているのだ。
加えて、で、いつなんだよと、皆もその返答を待っているのだ。
この社長、まわりに他のお客さんがいてもお構いなしで聞く。
恥ずかしがるんじゃない、みなさんも同じだと言い放ち答えを強要するのだ。
聞いているこっちが赤面しそうな質疑応答である。
社員も社員で、この手の質問は毎回お馴染みじゃないか、、
なのに、真面目な社員なんだろうか。答えを真剣に考えて、最近、残業続きでご無沙汰していますという答えを言ってしまったのである。
その答えを聞くや否や、社長は理不尽な決め台詞を吐く。
だからお前は、ダメなんだー。罰として飲め!
大将、お代わりだ。
アイよー!
なら、残業なんかしてないで帰れよ。
な、部長、そうだろッ。
嫁と何するから帰らしてくれって言われたら、帰って良しって言うだろう。
はい、もちろんです。
(上手い!)
流石は部長。その返答は経験者のそれだった。
ホントですか、帰らしていただけるんですか。
当たり前だ! よし、誰か明日中に申請書作っとけ! ガハハハッ。
もう、完全に吉本新喜劇のノリだった。
こんな風に、宴会も盛り上がって中盤戦。
ビールの樽が2つ空になった頃、また思い出したように喚いている。
いいか、お前、ヒック。
今晩、必ずやるんだぞ、必ずだ。
今日帰ったら、忍び込め。いいな、社長命令だ。
有無を言わさず、飛び掛かれ、男だろ!
飲めよー。
こんな感じで、夫婦の秘め事にまでに説教を垂れまくり、完全にアウトに思われるが、何故か皆さん仲は良さそうな雰囲気だった。
この日は、終盤戦の会話で慰安旅行の話で盛り上がっておられた様だった。
話によると、昨年はフィリピンへ慰安旅行に行ったらしいのだ。
この社長、そこは昭和の社長で慰安旅行の費用は会社が全額負担して行っているらしかった。
まして、ほぼ男性職員しかいない職場だ。
飛び交う慰安旅行の話は、あまりにもお下品過ぎて、流石の私も文字にすることを躊躇ってしまうレベルだ。
例えば、
○○ちゃん、どうだった? みたいな質問で、
うーむ、描けてこのあたり迄か。
この先を描くとすれば、、
いやー、○○ちゃんの○○は、○○で、ちょっと○○でしたよ。
ね、文章になら無いでしょう。
まあ、全てがこんな感じで、とても店の中の会話とは思えないお下品極まりない会話が続き、次行くなら、タイが良いと言う話に移行していったのだった。
そうか、次はタイのお寺巡りに行きたいのか、よし行こう。ガハッハなんて笑っておいでだった。
その時だった。
カウンターの中のオヤジさんが、社長、社長、と呼び掛けた。
タイに行かれるんだったら、こちらさんに聞けば何でも教えてくれますよ、と私を指さすのだった。
私もこの店の常連。
あちらの理不尽社長ともこの店での面識はあった。
ほー、そうですか。そちらさんはタイのエキスパートなんですな。
ええ、まあ、ソコソコは。
エキスパートと言う表現に笑いかけたが、あまり愛想よくするとビール飲めと必ず来るから控えめにしておいた。
が、甘かったようだ。
直ぐにビールが運ばれてきて、乾杯となってしまった。
田中、お前そこ空けろ、先生に座ってもらってタイの話を聞かせてもらおうじゃないか。
あちゃー、結局こうなるのね。
オヤジさんも罪なお人だ。こうなる事は分かっていた筈だ。
まあ、私もこの程度の理不尽ならお相手仕(つかまつ)ります。
いいですか、皆さん。
では、タイの遊びはですね、大きく分けて4つあります。
まず、その種類からお話しましょうか、、
★★★
【おまけ】
この社長は、私の愛した男達のエントリーナンバー2、となります。
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