【最終報】衝撃事件簿、ベトナムのタクシー
タクシーの思い出情報を書こうと思い第1回はベトナムにフォーカスを当ててみた。
記憶と言うものは面白い糸で繋がっているらしく、よけいな記憶がどんどんと出てきてしまう。
おかげで、本題のタクシーの話は4割程度しか記述していないのではあるまいか。
ま、自身は、若き日に憧れたベトナムの話を思い出せたし、何より友達が見せてくれた激烈に熱い一枚の写真に魂を奮い立たせたあの日の事を思い出せたので満足であったが、読者諸氏には無駄話が多かったかもしれない。
今でも、ドクンと脈打つ鮮明な記憶というものは時を超える力を持っている。
まあ、思い出に浸るのはこのぐらいにしておこうか。
その内、番外編でシンガポールの話なんかもお伝えすることがあるかもしれない。フフフふ。
さて、再出発したタクシーは割と幅広の道を10分、15分と走り飛ばし、右に折れて橋の様なものを渡った記憶がある。
そこから少しジグザグ運転で、裏通りのその裏へやって来た。
ここからは、もう表通りの明かりや喧騒は全く感じ取ることができない秘密のエリアだ。
こうなっては、この左の運転手が箆棒(べらぼう)に悪いやつじゃないことを祈るばかりだ。
さっきの電話を境に確実に変貌している運転手。なんだこの余裕感は、、
そうこう思考を巡らせていると、タクシーが徐行運転に変わった。
時速10Km程にペースダウン。
着いたのか。
己が記憶に問いかけた。普通、カラオケ屋と言えば、華やかな、それでいてケバケバしい、どこから見てもそれと分かる、、
こんな感じだろ、☟☟☟
(あくまでもイメージね。)
なのに、どうしたここは、めっちゃ暗いし、
あ、運転手がまた電話を手に持った。
きっと、到着の電話だ。タクシーはほぼ止まりかけている。
距離、およそ20m、左手側前方、ほんのりと、ピンクとブルーのネオンが見える。
それも、ポツン、と一軒だけだ。
あの店は、一体誰のために存在しているのか、、
イメージは、こんな感じ☟☟☟
実際は、路地の奥、玄関が少し奥まっており、店先に車が2台ほど止められるスペースがありる。おまけに、この駐車スペースの上は屋根付きで、極めて玄関が見えにくい。
ギョワッチ、
危険!、ビーブー、ビーブー、違和感センサーが唸りを上げて、退却命令を掛けてくる。
分かっている。
こっちも、それなりの場数を踏んでいる。こんな店に入ったら最後、穴の毛まで抜かれて、裸でポイッだ。
しかし、こちらも、どうしようもない。
タクシーの助手席でシートベルトにしっかりと体をホールドされている。
まして、連呼して、カラオケに連れてけって言ったのは私自身だ。
ドライバーは粘り強く、ここまで連れて来てくれただけだ。
だが、あの入り口は間違いなくブラックホールだ。
わぁおッ、誰か見せから出て来た。
小走りで、車に歩み寄る。
運転手には一瞥(いちべつ)をくれただけで、車の右側、そう、私側に直接近寄って来た。
とりあえず、ガラスを下ろして、ヨッ、っと挨拶する。
緊張の一瞬だ!
ギョーッ、凄いやつだ。
正に、この方にクリソツ、
そう、総合格闘家の、神の子KIDですよ。
ベトナム、ハノイの路地裏で、私のタクシーの窓越しに話しているのは、KIDッ。
でも、どちらかと言えば、
こちらの、KIDさんの方がクリソツ、
なあ、兄さん、一杯飲んでってよ。
女の子、いっぱいいるからさぁ。
なるほど、どんな風貌でも、客に接する言葉は万国共通なんだと変なことに感心したが、
心臓は、バクバク状態を通り超えて、アップアップ状態。
何やら、そこら中がジンジンするぜ、、
運ちゃん、バックや、バックギア入れて、踏み込むんやー、って、
心の中で叫んだけど、無理。
彼らは一蓮托生。
今や、袋のネズミ状態。
さあ、考えろ、俺。
この状態から、どうやったら、明るく街行く人の足音の聞こえる安全地帯まで引き返す事が出来るのか、、
しかし、人間面白い。もし、ここで怖いもの見たさの突撃調査で一杯飲めば、一生の思い出になること間違いないゾと誘惑して来るもう一人の自分も存在しているのだ。
いや、あかん。今回ばかりは度を超えている。
帰還作戦を遂行せねば、、
分かった、明日来る。
とっさに、口から出た言葉だ。
店の方を指さして、あれはどう考えてもジャパニーズカラオケじゃない。
あの怪しいお店は、何屋さんやねん?
左手は、ダッシュボードを握りしめ、右肘は開いた窓の枠の上にカッコをつけて乗せてある。
鼻を指で少しこすりながら、Tomorrowだ。
もうここは、英語をバッツんばっつん、たたみかけるしか技が無い。
Tommorow、promise、come backだ、OK、mate!
さっと、ポケットに入っていたUS1ドル札を数枚、彼に握らせた。
同時に、ドライバー、レッツゴーだ!!!
NEXT!!!(次ッ!!!)
勢いというのは、時に役に立つ。
特段、次の予定などない。勢いのみであった。
しかし、ドライバー君は、エンジンをかけて、ギアーを入れて発進してくれたのだ。
しばらく、黙った。
心臓が、大きくドキドキするのを待って、
Thank you.
ドライバーに礼を言ったベトナム・ファーストナイトはネオン街だった。
完
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