(14) タイ、バンコク、トゥクトゥク物語【ビール乾杯、出会いと別れ】
ダイビングをすると激しく体力を消耗しドッと疲れる。
出発が早朝という事もあるが、やはり重いタンクと機材を身に付けたり外したり、船の上を行ったり来たりと重労働なのだ。
一旦ホテルに戻り、休憩がてらベッドに横たわると、これまた連日のバービアの疲れが出たようで2時間程眠ってしまった。
ふと目を覚ましてベッドサイドの時計を見ると、集合時刻の30分前だった。
おっとっと、慌てて着ているものを2アクションで上下全部を脱ぎ棄てて、全裸でバスルームへ直行した。
少し急がねば。
シャンプーを多めに髪に垂らして泡立てて体もアソコも一緒に洗い流した。
鏡の前で、まだ濡れた体にバスタオルを巻き付け、念入りに歯を磨いて手櫛で短髪を整えた。
日に焼けた腕と肩に備え付けのローションを塗り、耳の中の水気を取るとザラッと塩の結晶が拭き取れた。
今日は、アイロン掛けの済んだピンクのアロハシャツで気合を入れる。
バンッと繊維を伸ばして右手から羽織って、やはりサングラスを胸のポッケに差し込んだ。
夜のお出かけ、スッチーさんが待っている。
お気に入りのコロンをピュッとふり掛けると、ぺッ、やはり口に少し入ってしまった。
まあ、これで上出来だろう。
フフ、これ以上仕上げたら、街の女どもが振り向いてしまって面倒だ。
一度でいいから、そんな魔法を掛けてもらいたいものだ。
最終チェックと鏡の前立って腕時計を確認すると、ベッドから起き上がって約13分が経過していた。
よし、出撃だ! シャー。
1階へ降りると流石に朝のベルガールは勤務を終えており、若いイケメン君がドアを開けてくれた。
お近づきの印と言ってはなんだが、少しチップを渡して、またよろしくと挨拶をしておいた。
こう言う事がとても大事で、今夜の展開次第では彼に一肌脱いでもらう事になるやもしれない。
念には念を、外堀は遠い所から、妄想は空想の大人バージョン、基本中の基本だ。
★★
店に到着すると、今度は日本人の男子二人だけが到着していた。
なるほど、朝の様に船が出るぞーという時は皆さん時間厳守だが、夜の飲み会ごときに時間厳守なのは日本人のみなのか。
流石は、日本人だ。誇らしい。
18時集合で、最後の一組が現れたのは18時30分だった。
みんなの到着を待っている間、ボックスにこの辺りのダイビングスポットの話なんかを聞きながら時を潰した。
ちなみに、私は明日のダイビングにも参加することになっている。
じゃあ、Everybody、行きましょうかとアシスタントが声を掛けて店の前に出た。
レストランまでは、10分位だからと皆で歩いて行くことになった。
南国リゾート、プーケットの夜。
今夜も通りの屋台は裸電球に明かりを灯し、バービアも開店準備を進めている。
バービアで働く女の子の中には、店の2階に住んでいる娘も珍しくなく、着替えと化粧をする前のラフな格好で開店準備を手伝っている姿が散見された。
私は、こういった本番前の風景が大好きだった。
今日一日、いや、今夜一晩、どんな客が来てどんなドラマが展開されるのかをその風景の中に想像するだけで楽しかった。
斯(か)く言う私も、今宵はドラマの主人公。一体どんなストーリーが待っているのか。一歩進めるごとに興奮度がイエローゾーンに上がっていくのが感じられた。
★★
時間を少し巻き戻してみよう。
ダイビングショップに先着していた男子二人に「朝はお疲れ~」と声を掛けると、「俺達の方こそありがとうございました」と丁寧に返答をしてくれた。
彼らの返事には、経験豊富なダイバーに対するリスペクトがあった。
昼間、ダイビングの話で盛り上がったのが良かったのだろう。
二人とは明日も一緒に潜る事になっていたし、ちょっとダイビングの魅力に嵌り掛けているようでもあった。
二人は、見事にチビとノッポの二人組で幼馴染の関係という事であった。
この彼らとは、おいおいバンコクの有名歓楽街で落ち合う約束をすることになるのだが、この時点ではまだそこまでの仲にはなっていなかった。
★★★
到着したローカルのタイ料理店では、我々が総勢15名でやって来ると事前に聞いていた様子でテーブルが横一列にセットされていた。
どの席に座るかは、自ずと決まっている感じだった。
ダイビングの時と同じでAチームとBチームに分かれて着席した。
Bチームの外人さん達は、それぞれのカップルが向かい合わせで座り、Aチームは3対3で向き合って座った。
もちろん、私はマイちゃんの前に腰を掛けて鼻息荒く、ビールと注文を入れた。
みんなそれぞれに会話を弾ませ、Bチームの中年オヤジが歌を歌い、ダイビング仲間達との宴は最高潮に盛り上がって行った。
私も、Aチームのテーブルをリードしつつ、時折マイちゃんにウインクモーションを掛けて笑わせていた。
しかし、人生で初めての生(なま)スッチーさんとの飲み会に完全に我を失っていたのだろう。
普段よりもビールを呷るピッチが早かった。ヒック。
もちろん、ダイビングで疲れた体にアルコールを倍のスピードで吸収させたこともあるだろう。
彼女たちの休暇が3泊4日で、今日が2日目と言う話の頃には酔いの第一波に目を閉じながら話を聞いていたのだった。
宴開始から2時間ほど経った頃、ボックス君が「今回は、弊社のダイビングツアーに参加していただき本当にありがとうございました。」「今日一日、皆さんとご一緒できて本当に楽しかったです。」と言うお礼のあいさつを言い、最後にみんなで記念撮影をしてお開きとなった。
後半一時間程、ビールジョッキを片手に半分眠る様に時を過ごしたおかげか、ちょっと復活した。
マイちゃんを含むスッチー三人組はお買い物に行くと言う。
そうなのね。ここでお別れなのね、、
男子二人組の方は、この後遊びに行きますけど一緒に行きませんかと誘ってきた。
チックタック、チックタック、、
じゃあ、俺も一緒に行こうかな。
勢いと言葉の流れからくる選択だった。
タイ・プーケット4日目、後悔と期待が入り混じる少し塩っぽい夜が始まった。
つづく、、
★★★
【おまけ】
店の支払いは会費として集められていたからスムースに終える事が出来た。
Bチームの外人は、バラバラと夜の街に繰り出すとのことで、See you next time!
マイちゃん達とは、少し別れを惜しみ昼の写真を送るからと一応連絡先のやり取りして、ここで別れを告げた。
やはり、最後も手を差し出して握手を求めるような事はしなかった。
★★★
【おまけ2】
最後に残った男3人は、ボックスと明日の集合時間が今日と同じ7時30分だと確認をして店を後にした。
その背中に、あまり飲み過ぎないように!と気遣いの声を掛けてくれたので、Thank you. see you tomorrowとボックスに返事して別れたのだった。
さて、俺達も行きますか。
ブヒブヒッと鼻息の荒くなっているユウタ君(小さい方)が興奮気味のトーンで先頭に立って歩きだしたのだった。
ところで、この後、何処に行くか決めているのかと私が聞くと、昨日行った店が楽しかったのでもう一度行こうかとのことだった。
ケンジ君(デカイ方)が言うには、その店はですねえ、かくかくしかじかでえ、、
ユウタがめちゃめちゃ気に入りましてね。昨日知り合った娘に早く会いと急いでるんだと思いますよ。
へ~ぇ、そうなんだ。そんな良かったんだ、デへデヘ~。
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