本魔界事件簿、白のワンピースの女人、その1

こう暑い日が続くと、少し涼を求めたくなるというものだ。

よって、今日は少し怖い思い出話しをお届けしよう。

私が、その能力に気付いたのは、20代前半の頃だった。

どうも、私は、見える方らしい。

ある夏の暑い朝、営業先へ向かう途中、

二段飛ばしで、急いで階段を駆け上がり、発車寸前の電車に乗り込んだ。

ほうッ、間に合った。

幸運にも、車内はエアコンがしっかりと効いており、乗客もまばら、風当たりの良いベンチシートのど真ん中に腰を下ろした。

じっとりと、粘りつく様な汗を少し汚れたハンカチで一通り拭き終え、

あれッ、と違和感を覚えた。

さっき、私と一緒に駆け込み乗車した、ワンピース姿の女性が見あたらない。

どこへ、行った。

左、右、と様子を伺うが、朝10時の車中、乗客は少なく、子連れの主婦、老夫婦、サラリーマンだけだ。

確かに、ほぼ、同時に、隣の扉から乗り込んだ、あの女人どこだろう、、

因みに、この電車は、4人掛けボックスシートもいくつかある。

きっと、何処に座っているのだろうと、今から向かう営業先の資料を読み出した。

5、6分か、資料の復習を済ませて顔を上げると、電車は、丁度トンネルへ差し掛かるところだった。

特段、見ようとした分けでもないが、目の先のガラス窓に、先程見失なった女人の姿があった。

なんだ、やっぱりいたじゃないか。

正直、ほっとした。

そうこうしている内に、私の降りる駅が近づいて来た。

私は、下車すべく扉に近寄り、右隣のボックスシートを横目で確認した。

いない、、

いない、いない、、

もう、完璧に女のことで頭の中が一杯だ。

あの女人が、いないのだ。

営業なんかしている気分じゃないが、

とにかく、早く仕事を終わらせて落ち着こう。

11時過ぎ、喫茶店で一息付いて、ゆっくり思い出してみた。

走っていたせいか、朝の記憶が朧(おぼろ)げだ。

電車に、一緒に飛び乗ったはずだ。

トンネルの入り口では、あの女、確かに、窓に写って此方を見ていた。

あの白いワンピは、忘れない。

結構、好きなタイプの感じだったから、直ぐ記憶に押し込んだから、

堂々巡りの、一人問答で気を散らすつもりが、なんだか寒気がして来る。

こんな感じの怖さは、小学生の頃の肝試し以来だ。

実際、この女人とは、この後長く付き合うことになる。それは、追い追い語るとして、

事あるごとに、現れるのだ。

あッ、

今、ショッピングモールの3人掛けソファーの右側に座ってこの投稿を書いている。

私一人だ。

なのに、

今、左側のシートが、少し凹んだ。

間違いなく、いる。

やつが、座っていやがる。

見るか、、いや、、立ち去ろう、、

↓南無阿弥陀仏

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