【8.俺はスーパーヒーローになった】駅裏 雀荘物語

苛烈、熾烈、熱戦、激戦、

どの言葉をもってすれば、この3日間に雀士達が繰り広げた戦いを表現できるのだろうか。

勝者と敗者、サラリーマン達も、さまざまに新しい週を迎えているに違いない。

だが、バイトの先輩達は言う。

賭け事に新しい週もクソも無い。

月曜だからって、暇じゃないのが雀荘なのだと。

俺の方も、この3日間をどう表現すべきだろうか。

そんな事を考えながら、チリンチリンッ、

学校へ向かう自転車のペダルをグッと踏み込んだ。

登り坂だって、なんのその。

目の前に、オットセイを思い浮かべれば、

ウホウホッ。

一気に駆け上れるぜッ、ウホウホウッホー、だッつうの。

よーし、一番乗りだ。

学校に到着したのは、いつもより30分程も早かった。

ガラガラーと、扉を開けた教室には、まだ誰もいなかった。

何から話そうか、、

うーん、みんなが喰いつきそうな話だと、

間違いなく、ケッコウ仮面が一番効くだろうけど、、

オットセイとマダムのFカップ不倫は最後と決めてあるし、、

ま、入り口は、雀荘の話から盛り上げていくのが自然だな。

証拠の麻雀点数表も数冊持って帰って来た。

今日の話の臨場感を一気に高める、隠しアイテムになるはずだ。

よし、ロッカールームの話もちょっと入れて、、色を付けよう。

これ、今、ノートに話す順番を書き込んでいるです。

盛り上り過ぎると、話があらぬ方向に逸れて、戻ってこれなくなるから、

話すポイントをラインナップさせてあるのだった。

間違いなく、何人かは、

ケッコウ仮面の下りで、大量の質問攻撃を仕掛けてくるだろう。

で、見たのかよ、

どんなだったんだよ。さあさあ、

色は、形は、柔らかさは、どうだったんだよー、

止まらないはずだ。

しかし、ミッチャンの話は、ちょっと、どうしようかと悩んだ。

とりあえず、ノートには、Mを〇(まる)で囲んで、印だけは付けて置いた。

なぜか、秘密にしておきたいような、

誰にも知られたくないような、気分だった。

たぶん、話し出すと好きになったことがバレそうで嫌だったのだろう。

あ、読者の皆さんには言っておきますが、

昨夜、ミッチャンのアパートから帰ってくると、

猛烈に気持ちが動揺して、抑えきれなくなってしまった。

なんか、バーンって爆発しそうで、

スグにでも、もう一度会いたい、顔を見たい、

ピンポーンッ、ってあの呼び鈴を押してみたいという、

青春期ならではの、若さの何かが、

足の先から、膝と太もも、ケツの隙間と背筋を通って、

両手、両腕、肩に首、挙句の果ては、

髪の毛が逆立つほどに我慢がならなくて、

ギューッ、、、と股間を握って、事を静めて、

イー、フー、

ハー、フー、

立ったり、しゃがんだり、、

本当に、自分がミッチャンに惚れてしまった事を

全身のパーツで確かめて、やっと好きになってしまったと確信したのだった。

みんなに聞いてもらわずに、我慢できるだろうか、、

あ、おはよう。

一人来て、二人来て、そして、四、五人が揃った頃、

パンパン、ハーイ、皆さんお集まりくださーい。

二度ほど手を叩いて、注目を呼び込み、

ノッポ君から、報告がありまーす、と声を掛けた。

んッ、ざわ、ざわッ、

なんや、なんや、どうかしたんか、、

朝から、ニタニタしてるみたいよー達也が、

ハーイッ/、ノップ君って何ですかー。

ノッポだよ、まあいい。

お集まりいただきました皆さん、

私、達也は、金曜日から、ノッポという新しい名前で、

雀荘でアルバイトを始めましたー。

ぅおーぉッ、おごってくれるんか?

私、ひまわりのランチ、俺、ラーメン、

焼きそばパン2個、お願いしまーす。

飢えた友よ、お待ちなさい。

どうして君達は、そう急ぐ。

まあ、聞きなさい。

実は、金曜日、慌てて下校したのは、そのバイトへ行くためだったのですー。

そして、10分ほど時間をかけて、かくかくしかじか、

雀荘の客の話と部屋のレイアウト、喫茶店の方には年頃の女の子がいっぱいで、

堪らなく良い匂いがすると聴衆者の脳を刺激してやった。

女子更衣室とリョウ子仮面の話をした頃には、

椅子に座った男子2~3人が両手の肘を体の前で折りたたみ、

片方の手で、もう一方の手首をギュッと握っているのが見て取れた。

おー、みんな、話は未だ続く、一度落ち着こう、深呼吸だ。

フー、-、-、

楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。

話の途中だが、朝のホームルームが始まる時間になってしまった。

各授業の間の休憩時間も、刻み刻み話を加え、昼のステージの時間となった。

ある者は、弁当を食いながら幕が上がるのを待ち、

また、ある者は、早弁をしてまで、昼の講演を待っているかのようであった。

押すな、騒ぐな、話は逃げない。

予定通り、昼からは、Fカップマダムの話で盛り上がり、

リョウ子仮面の話が脇へ逸れた頃、

本日の大トリを務める、オットセイ部長に登場してもらったのだ。

おー、8回、

おー、3日連続、、

神の化身か、

いや、オットセイだ、まさに。

バッチリだった。

しかし、意外な展開が一つダケ待っていた。

このグループでは、比較的無口なS君が、ボソっと、

ふんッ、8回ッ、

んなもんは、何年も前にクリアーしてしまっている。

えーっ、

みんなが、同じようなリアクションでS君を見て、

次の言葉に注目した。

S君は、Vサインを作った手を前に半分ほど突き出して見せつけ、

更に、皆を左から右へと見回して、間を取った。

ゴクリと誰かが喉を鳴らして、S君の次の言葉を待った。

Vの文字、2桁だ。

お、おーッ、おー、2桁ーッ/

すげーよ、S、、

S(エッス)、S(エッス)、S(エッス)、、

みんなでS君の名を呼び、尊敬のまなざしで見つめた瞬間だった。

流石、我が勇士達よ。

誰かが、部長の記録に奮い立つのではとこの校正を考えたが、

無用だった様だ。

彼らは、既にオットセイを凌駕するほどに成長していたのだった。

記録、それは儚(はかな)い。

昔、鳥人間コンテストでそう言っていたのを思い出す。

今日も、午後の授業が終われば直行で雀荘へ行く。

これまでは、放課後の楽しいひと時(とき)を、成長期バリバリ全開の同級生男女と過ごしていたが、

しばらくお預けだ。

皆も、次なる刺激トークを期待しているに違いない。行かねば。

この日は、少し飛ばして25分ぐらいで到着したから余裕で間に合った。

15:45分、ビルの階段を上がって直接3階のロッカールームへ入った。

今日は、裏側の女子更衣室に人の気配を感じない。残念。

ササっと着替えてタバコに火を点けた。

逸(はや)る気持ちを何とか落ち着かせて、煙を深く吸い込んで目を閉じた。

ミッチャン、来てるかなー。

昨夜、眠れぬほどに自分の気持ちに興奮したのには理由があった。

アパートに行ったとき、ノッポ君じゃなくて、ノッポって呼ばれたことだった。

仲良くなってきたから、普通の事かもしれないが、

今の俺の気持ちを揺さぶるには十分な変化だった。

タバコをもみ消して、タイムカードを打ちに喫茶の方へ階段を下りて行った。

おはよう、ございまーす。

角度一杯、超ワイドな横目を使って、出勤者の確認をしたが、

ミッチャンの姿を捕らえる事はできなかった。

ガチャン、

タイムカードを打つと、リョウ子さんが俺を見つけて、

こっち、こっちと呼んでくれた。

昨日は、ありがとね。

ミチコも喜んでたよ。

あ、いえ、問題ないっす。

という事は、ミッチャン、今日は来てるんですね。良かったー。

うーん、でもないかな。

やっぱ、ちょっと元気ないみたいなんだよねー。

やっぱり、昨日、ミッチャン泣いてたんですか。

みたいだねー。

私も、そう思って、聞いてみたんだよ。

でも、ミチコ、話さないのよ、大丈夫だってね。

なんか、話したくないみたいなのよねー、私には、、

そうだ。

ノッポ、一度聞いてあげてくれない?

意外と、ノッポになら話すかもしれないじゃない、同い年だし。

そうだったのだ、ミッチャンは最初、自分の方が一コ下だと言っていたけど、

俺が早生まれで、学年は違ったけど同じ年だった。

今、ミチコ、4階にいるんだよね。

え、どうしたんですか。

それが分からないんだよねー。

昨日の休みだって、ちゃんと連絡してるのにねえ。

ノッポ、鬼瓦知ってるよね。

あの、島崎課長のことですか。

そう、鬼瓦課長。

ハハ、きついですねー。

ソックリでしょう。

まあ。

その鬼瓦課長様に呼ばれて4階へ上がってったのよ。 

たぶん、もうそろそろ下りてくると思うの。

そしたら、ノッポにお礼しときなよって、

そっちに行かせるから、ちょっと聞いてみて。

分かりました。

軽く返事はしたものの、俺で大丈夫かなー、

それでも、ミッチャンが扉を開けて、

カラン、コローンと入ってくると考えただけで、胸がドキドキと音を立てて止まらなかった。

つづく、、

謎の美人2

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【予告報】

リョウ子に頼まれて、ミチコと話をする事になったノッポ。

好きな娘と話せると軽く引き受けたのだったが、、

えーッ、ちょっと待って、お母さんが、、

え、いつ?

一昨日(おととい)の夜にね、、

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